6月2日の明治安田生命J1リーグ第21節で川崎フロンターレは横浜FCと対戦。日本代表とU-24日本代表に計5人を送り込んで不在だったが、そこで意地を見せたかったのは脇坂泰斗。やや押され気味の苦しい展開を一本のパスで変えてみせた。

上写真=代表組5人が抜けたからこそ勝たなければ。脇坂泰斗と選手たちの思いがピッチに表現された(写真◎J.LEAGUE)

■2021年6月2日 明治安田生命J1リーグ第21節(@ニッパツ/観衆4,855人)
横浜FC 0-2 川崎F
得点:(川)小林悠2

「選手としての価値が問われる試合だった」

 先制点は39分と遅めだったけれど、後半早々に追加点を挙げるのではないかと思われた。前半はほとんどパーフェクトに支配していたからだ。

 ところがその逆。ハーフタイムに引き締め直した横浜FCの鋭い守備を受ける格好になってしまった。こちらがボールを足元に置く時間が大幅に減って、守備に回る時間が続いた。

 それをもう一度、自分たちのゲームに引き戻したのは、脇坂泰斗の一本のパスだったと言ってもいいだろう。67分、GKチョン・ソンリョンが大きく蹴ったボールを相手がヘッドしたボールが脇坂の足元へ。すかさず左サイドのスペースに送って長谷川竜也が走るコースの先にピタリと届けた。センタリングを小林悠がこの日の自身2点目を決めて2-0だ。

「セカンドボールを拾うのは試合前からも試合中も声をかけ合っていましたけど、あそこでもうまく拾えて、竜也くんが走っているのが見えたので、スピードを殺さずアウトでうまくいいパスを出せて得点につながりました。狙い通りのパスだったし、その後の展開も狙い通りでよかったです」

 右のアウトサイドでこするように回転をかけて、バウンドしたときにスピードが落ちない工夫を仕込んだ。視野の広さと技術を選び取る判断と実行が伴ったきれいなパスだった。

 この日は日本代表に選ばれた谷口彰悟、山根視来、U-24日本代表に選ばれた三笘薫、旗手怜央、田中碧と5人も不在だった。代わってプロ初出場のイサカ・ゼインが右サイドバックで先発したり、大卒ルーキーの橘田健人も3月6日以来、2度目の先発とフレッシュなメンバーも加わっていた。だからこそ、勝っておきたい一戦だった。

「ここでフロンターレの強さを示さないといけないと、みんな思っていました。初めて出る選手もいてその選手のためにもというか、みんなが選手としての価値が問われる試合だったので、勝ちきれてよかったです」

 チーム力の底上げを期待してきた鬼木達監督も「全員が勝つために何をするかをわかった上でやってくれました」と高く評価した。一方で脇坂はもちろん、反省点も忘れない。

「引いてくる相手への攻撃はずっと取り組んでいるところでもありますし、うまくはまらなかったのはボールを持っている選手へのサポートが少なかったからです。距離感の問題や、奪ってからカウンターができてしまうので試合展開にもよるんですけど、そういうところになるのかなと」

 いつものように、華麗にボールを動かして相手守備網を切り裂いていくような攻撃は、数えるほどしか見られなかったのも事実。出場機会の少ないメンバーもしかし、実際のピッチの上で戦うことによって体感できたはずだ。5人がいない分、別の5人が新しい経験を得て、チームはさらに大きく強くなっていく。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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