川崎フロンターレはJ1第14節で、北海道コンサドーレ札幌と対戦し、見事に勝利を飾った。1点をリードして迎えた60分、相手のFKの場面で駆け引きを制したGKチョン・ソンリョンのプレーも大きかった。勝利をグッと手繰り寄せた好セーブを守護神が振り返る。

上写真=FKの場面で壁をつくる仲間に指示を送るチョン・ソンリョン(写真◎J.LEAGUE)

■2021年5月16日 明治安田生命J1リーグ第14節(@等々力陸/観衆4,932人)
川崎F 2-0 札幌
得点:(川)三笘薫、小林悠

先に動かないことを意識しました

 追いつかれれば、前節の嫌な記憶が頭をよぎる、そんな場面だった。60分。相手に直接FKのチャンスを与えた。蹴るのは札幌の、いやJリーグ屈指の名手、福森晃斗。チョン・ソンリョンは、はた目には一瞬だったキッカーとの駆け引きを説明した。

「福森(晃斗)選手は素晴らしいキックを持っているし、どの位置からも狙える。あの場面は先に動かないことを意識しました。左に寄っていたが、先に動かずに最後までボールを見て判断できた」

 先に動けば、決められる。動き出しが遅くても、やられてしまう。ジャストのタイミングと的確なプレー選択が重要だった。

「位置が正面よりも少し右でした。壁でそのコースを切りながら、少しだけ左に寄りました。キッカーも自分のポジションを見ていたと思います。壁と力を合わせて、(消した左側と)逆に来たときは僕が絶対に守らないといけないと思っています」

 福森が蹴ったボールはゴール左上へと飛び、枠をとらえた。スピードもコースも名手のそれ。だが、この勝負はチョン・ソンリョンが制す。ドンピシャのタイミングで右に飛び、そして右手でボールをはじき出した。

 セーブに成功した瞬間、チームメイトがすぐに駆け寄った。好セーブは1ゴールと同じ価値を持つと言われる。時に1点以上の価値さえ持つと言われるが、1点をリードしている場面で、札幌の『武器』を封じたこのプレーは、まさしくそんな価値あるプレーだった。仙台戦で追いつかれてリズムを失ったことを思えば、嫌な記憶を払しょくする意味でも大きかった。

「いまチームは、監督が求める、球際、切り替え、ハードワークをしっかり意識して、成長している」

 この日、チームは22戦無敗を達成した。チョン・ソンリョンはそのうち17試合でゴールを守り、記録達成に貢献。圧倒的な攻撃力に注目が行きがちだが、この好成績は安定した守備力もあるからこそ成し遂げられたのは間違いない。

「全員で攻撃して全員で守備をして、勝ちながら成長できていると思います」

 勝ちながら成長を続ける川崎F。最後尾で安心感を与える守護神の存在が、チームの進化を支えている。


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