2021年5月9日、明治安田生命J1リーグ第13節が開催された。日産スタジアムでは、横浜F・マリノスとヴィッセル神戸が対戦。開始直後は神戸ペースだったものの、徐々に横浜FMが自分たちのスタイルを発揮して流れを引き寄せ、相手のミスを逃さずに勝ち切った。これでリーグ4連勝。11戦不敗で上位対決を制してみせた。

上写真=チームの2点目を記録した天野純を仲間が祝福(写真◎J.LEAGUE)

■2021年5月9日 明治安田生命J1リーグ第13節(@日産スタ/観衆4,,977人)
横浜FM 2-0 神戸
得点:(横)オウンゴール、天野純

・横浜FMメンバー:GK高丘陽平、DF松原健、チアゴ・マルチンス、畠中槙之輔、ティーラトン、MF喜田拓也、扇原貴宏、マルコス・ジュニオール(20分:天野純→90分:渡辺皓太)、FWエウベル(90分:小池龍太)、オナイウ阿道(73分:レオ・セアラ)、前田大然(73分:水沼宏太)

・神戸メンバー:GK前川黛也、DF山川哲史(81分:初瀬亮)、菊池流帆、トーマス・フェルマーレン、酒井高徳、MFセルジ・サンペール(46分:郷家友太)、山口蛍、佐々木大樹(60分:アンドレス・イニエスタ)、井上潮音(46分:リンコン)、FW古橋亨梧、中坂勇哉(60分:アユブ・マシカ)

天野純の登場で横浜FMがペースを握り返す

 4位横浜FMと5位神戸の対戦。前者はここ10戦不敗で3連勝中。後者は8戦負けなし。ともに今季はまだ1敗しかしておらず、横浜FMは7勝3分けで、神戸は6勝5分け。勝利の数が多い分、ホームチームが上位に位置している。好調な上位チーム同士の対戦が、この日、実現した。

 しかも両者の最近の対戦は決まって、スペクタクルに富んだ内容になる。昨季のJ1では神戸が1勝1分けだったが、そのスコアは3-2(20節)と3-3(13節)。さらにゼロックス杯も3-3と点の取り合いを演じ、PK戦の末に神戸がタイトルをモノにした。

 近年の成績では神戸優位で、この日のゲームでも立ち上がりは神戸が持ち味を出した。横浜FMにプレッシャーをかけ、テンポアップを封じていく。人をしっかりつかまえて攻撃の形を作らせなかった。一方で相手最終ラインの裏へボールを送り込み、古橋の速さを生かしてゴールに迫る。15分にはボックス内に進入し、反転シュートでゴールを狙ったが、GK高丘の好守に阻まれた。

 横浜FMがペースを握ったのは、マルコス・Jが負傷交代して20分過ぎからだ。代わってトップ下に入った天野がスペースでボールに触ってリズムを作り、パスのレンジを変えつつ、相手のプレッシャーをかいくぐった。そして41分にも天野のプレーからゴールを導く。自陣のハーフウェーライン付近でボールを持つと、左サイドのティーラトンに展開。深く進入した左サイドバックが中へ鋭いクロスを送ると前田がニアで潰れ、ゴール方向に戻ってきたフェルマーレンに当たり、そのままゴールイン。押し気味に試合を進めていた横浜FMが先制に成功した。

 後半、追いかける展開になった神戸はスタートからリンコンと郷家を投入。さらに60分にはマシカ、イニエスタをピッチに送って陣形も4-4-2から4-2-3-1に変更し、ゲームを動かしにかかった。77分にはイニエスタのスルーパスを裏で受けた古橋がゴールに迫ったが、シュートはわずかに枠を逸れる。まさに決定機だったが、決め切ることはできなかった。

自分たちのプレーができた良いゲーム(ポステコグルー監督)

 攻めにかかった相手に対して横浜FMも前向きの守備を継続しつつ対抗していく。疲れの見えた前田、オナイウをそれぞれ水沼、レオ・セアラに代えてプレスの強度を維持した。その甲斐もあり、高い位置からプレッシャーをかけると、決定的なゴールを奪う。80分のことだ。

 相手のビルドアップを妨げ、ボールをGKまで下げさせる。ボックスの外でバックパスを受けた相手GKの前川が左に展開したボールを、水沼がカット。そのままレオ・セオラ、逆サイドの左のエウベルにつなぎ、シュートに持ち込んだ。必死にゴールに戻った前川に一度は止められたものの、詰めていた天野が押し込み、2-0。勝利を手繰り寄せた。

「良いパフォーマンスができたと思います。気温が高くタフな天候の中、相手が前からプレスに来てもそれをはがし、チャンスを作って、すごく良い2ゴールが生まれました。自分たちのやろうとすることができた良いゲームだったと思います」

 ポステコグルー監督は自分たちのサッカーをやり続けた結果だと強調した。とくに後半は攻めに転じた際に複数人が絡んでいく特徴を存分に発揮。強度も保って地力を示し、勝利をつかみ取った。昨季のような打ち合いにはならなかったが、指揮官が繰り返し求めてきた「自分たちのサッカー」できっちりポイントを積み上げた。「結果も内容も今日の試合はマリノスの方が上だったとも思います、前半マリノスのプレスに対していい立ち位置を取れなかった」と敵将・三浦淳寛監督も力負けを認めている。

 これで横浜FMは、11戦負けなし。首位の川崎Fとは勝ち点で14ポイントの差があるものの、試合消化数も3試合少なく、しっかり『追走』している状態と言える。リーグ戦はまだ3分の1を終えたばかりだが、この後の戦いを考えれば、さらに自信を深めるという意味でも好調な神戸との上位対決を制したのは大きい。ちなみに今季、横浜FMが唯一、黒星を喫したのが開幕戦で当たった川崎Fだった。リーグ戦で両者が再び相まみえるのは最終節、12月4日になるーー。

取材◎佐藤 景 写真◎J.LEAGUE


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