4月7日の明治安田生命J1リーグ第8節で、首位の川崎フロンターレは4位サガン鳥栖を迎える上位決戦。昨季のこのカードは2試合とも引き分けだったが、川崎Fが遠野大弥の一発で逃げ切ってJ1通算300勝とした。

上写真=決勝ゴールを挙げた遠野大弥(左)がベンチに歓喜のダッシュ! 川崎Fがこの1点でJ1通算300勝を手に(写真◎J.LEAGUE)

■2021年4月7日 明治安田生命J1リーグ第8節(@等々力/観衆9,173人)
川崎F 1-0 鳥栖
得点:(川)遠野大弥

画像: ■2021年4月7日 明治安田生命J1リーグ第8節(@等々力/観衆9,173人) 川崎F 1-0 鳥栖 得点:(川)遠野大弥

「それを美談にするつもりはありません」

 入りそうで、入らない。

 J1で首位をいく川崎フロンターレが第8節で迎えたのがサガン鳥栖。7勝1分けの川崎Fに対して鳥栖も4勝2分け1敗で4位につけていて、今季序盤の注目チームとなった。しかもこのカード、昨季は0-0と1-1のドローで、圧倒的優勝を飾った川崎Fが唯一、勝てなかった相手だった。

 鳥栖にとっては、今季の好調ぶりをぶつけて現在地を探るには絶好の相手。川崎Fにとってはもちろん、決着をつけたいところ。両者の思惑がぶつかる戦いになったが、前半から川崎Fが主導権を握るのは予想通りだった。

 ただ、どこか迫力が足りない。鬼木達監督も「こちらの精度の問題」と指摘した通り、正確性に欠けた。もちろん主導権を握りながら試合を進めるが、珍しくつなぎのパスの中でずれが目立ち、攻撃がノッキング。28分、レアンドロ・ダミアンが右に流して折り返しを田中碧がプッシュしようとしたシュートはカバーに入った松岡大起がクリア、41分には左からカットインした長谷川竜也がレアンドロ・ダミアンに預け、そのまま打ったシュートはわずか右、2分後に田中の右奥へのスルーパスで抜け出した山根視来の折り返しは、レアンドロ・ダミアンが触るわずか前に田代雅也にブロックされ、前半はノーゴールに終わった。

 それでも地力の差は徐々に明らかになっていく。57分には鳥栖の田代雅也がレアンドロ・ダミアンと入れ替わるところで手でつかんで退場処分。これを受けて鳥栖が3人を交代させて仕切り直しをすれば、川崎Fもほぼ同時に遠野大弥と三笘薫と攻撃に特徴のある2人を入れて一気に攻め立てにきた。これが一つの潮目になっただろうか。決勝点が生まれたのは、この3分後だった。

 ジョアン・シミッチがレアンドロ・ダミアンに鋭い縦パスを送り、軽くヒールで流すように前に送ると、中央でもつれ、DFがもたつくところを遠野は見逃さなかった。ルーズボールを思い切り蹴り込み、歓喜のダッシュ。結局これが決勝点になった。

 鳥栖の金明輝監督は「勝ちに来たので悔しいです」と唇を噛む。やはり退場者が出たことを悔やんだ。

「10人になっても選手たちは勇敢に戦いました。奪いにも行かせましたし、行けていました。川崎を相手に10人で前から取りに行くチームはないと思います。でも、それを美談にするつもりはありません。得失点差を考えて0-1でよしとするスタンスも頭がよぎりましたが、それで何が残るのか。だから、前に一歩進めたゲームだと思います」

 前半から真っ向勝負、1人少なくなってもバランスを保ちながらゴールへの意欲をむき出しにした。最後まで鳥栖らしく戦ったのが収穫になった。

 川崎FはこれでJ1通算300勝。鬼木監督はこの節目の勝利で改めて気づきを得た。

「ちょっとしたところのていねいさと大胆さの兼ね合いがうまくいかなったところがあります。フリー過ぎてしまったりして、そういうときに最善の判断できればよかったし、相手が固めたところでコンビで崩す上では、スピードを上げすぎずにていねいにいくことが改めて大事だなと感じました」

 次節、301勝目をかけて、FC東京との多摩川クラシコに臨む。

現地取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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