かつて川崎フロンターレのエースとして数々のゴールを決めてファン・サポーターを喜ばせてきた大久保嘉人が、等々力に帰ってきた。いまはセレッソ大阪の顔として引っ張る男が、古巣に見舞った恩返し弾2発は見事だった。

上写真=久々の等々力のピッチで2ゴール。大久保嘉人の笑顔が弾けた(写真◎小山真司)

■2021年3月3日 明治安田生命J1リーグ第11節(@等々力/観衆4,756人)
川崎F 3-2 C大阪
得点:(川)レアンドロ・ダミアン2、三笘薫
   (C)大久保嘉人2

「もっと怖いチームになりますよ」

 かつての川崎フロンターレのエースが、等々力で燃える2ゴールだ。曲者・大久保嘉人らしい驚きの連続だった。

 開始わずか5分のゴールはサプライズ。右サイドを坂元達裕がドリブルで持ち上がり、斜め後ろに戻すと、ゴールまで20メートル以上の距離からロングシュート。GKチョン・ソンリョンの伸ばした手の先を越えて左ポストに当たり、ゴールに飛び込んだ。

 2分後に川崎Fがレアンドロ・ダミアンの強烈なボレーシュートであっけなく同点に追いついたのだが、次のゴールを決めたのも大久保。22分、右からの松田陸のクロスがまたもチョン・ソンリョンを越え、なだれ込むように走っていた大久保が左足で押し込んだ。

 意外性のあるミドルとストライカーらしく迫力を持ってゴール前に突っ込んだ2ゴール。これぞ大久保という仕留め方だった。前節の開幕戦では長居スタジアムで決めていて、セレッソ大阪復帰を自ら祝う一発。2試合続けて「凱旋ゴール」となった。

「チームとして得点かほしかったので、前半から体力を残さずいってやろうという気持ちでした」

 思い出の等々力。想いが強くならないわけはない。

「1点目は時間が早かったのでとりあえず枠内に打とうと思ったら、ブレたので良かったと思います」

「2点目は、いつもいいクロスが入ってくるのでディフェンダーの間に立ちながら、ボールが伸びたのでその瞬間にキーパーととジェジエウがかぶってくれて、そこを突きました」

 しかし、勝てなかった。後半開始直後と62分にゴールを許して2-3と逆転された。大久保自身は左足首に負傷を抱えていたものの、85分まで懐かしのピッチを走り回った。

「最初のプランは自分たちもボールを持ちながら、相手のディフェンスラインが高いので裏や間で受けて、そこからゴール前へ、というものでした。こっちが勝っていると向こうも前がかりになってくるし、向こうに持たれても間を締めながら取りにいくという形を途中まで見せたけど、川崎の方が一個うまかったかな」

 古巣を讃えつつも、大きな自信も口にした。

「川崎はずっと同じ形でやって来ているけれど、こっちもレヴィー(クルピ監督)になって面白い試合はできていると思うので、自信を持ってやり続ければ、これでまだ2試合目だしもっと怖いチームになりますよ。マイナスなことはないですし、自信を持ってこれから先もやっていけると思います」

 昨季限りで川崎Fを引退したレジェンド、中村憲剛さんは「等々力には神様がいる」と言った。かつて名コンビを組んだ大久保にも、等々力の神様が少しだけ微笑んでくれたのかもしれない。

取材◎平澤大輔 写真◎小山真司


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