川崎フロンターレは開幕戦で横浜F・マリノスに2-0と快勝した。注目のオープニングゲームでチームを勝利に導く2ゴールを記録したのが、家長昭博だ。3トップの右翼として先発すると攻守に躍動し、勝利の立役者となった。

上写真=開幕戦で圧倒的な存在感を示した家長昭博(写真◎Getty Images)

■2021年2月26日 明治安田生命J1リーグ第1節(@等々力陸/観衆5,137人)
川崎F 2-0 横浜FM
得点:(川)家長昭博2

一番上がしっかりやれば引き締まる

「2点取れたのはできすぎだと思いますし、その他のプレーはいたって普通でしたけど、点を取れたことは良かったですね」

 試合後の会見。あれだけのプレーを見せて「いたって普通」とは、何とも家長らしい。見ている世界はどこまでハイレベルなのか。88分にピッチを退くまで、圧倒的なスキルと強さ、ゲームの流れを読む力をまざまざと見せつけていた。

 チームが挙げた2ゴールはいずれも家長が決めたものだ。まずは1点目。連動して相手にプレッシャーをかけ、チームで守功のスイッチを切り替えると、脇坂泰斗、山根視来とつながったボールを最後は左足ボレーで決めた。さぼらずに相手に圧力をかけ、攻撃を展開し、流れを予測し、ポジションを移動し、パスに反応し、そして見事にネットを揺らした。

 2点目もまた、素晴らしかった。これまたチームが連動した守りで左サイドでボールを奪い、そこから攻撃を右へと展開。レアンドロ・ダミアンとのワンツーで抜け出した田中碧が右から高速クロスを入れると、ドンピシャのタイミングで飛び込み、豪快なヘッドを叩き込んだ。

 本人は「出来すぎ」と振り返ったが、2ゴールとも説得力は十分。決して、まぐれの類ではない。いずれも簡単なシュートではなかったものの、きっちり決めてみせた。家長の高い技術とシュートセンスがその二つのゴールには凝縮していた。フィニッシャーとしての才を改めて示したと言っていい。

 鬼木達監督は折に触れて「家長にはもっとゴールを狙ってほしい」と話しているが、今季は昨季記録したキャリアハイの11ゴール以上を期待していいのかもしれない。鬼木体制になった過去4シーズンで3度J1を制した川崎Fが唯一、リーグ優勝を逃した2019年、家長はノーゴールに終わっている。もちろん昨季から3トップの右翼でプレーする機会が多く、ポジションが前目になったことでシュート機会が増えたのは事実だろう。ただ、本人もその役割をしっかり引き受け、昨季からは、より積極的にシュートを狙うようになったと映る。

 そして今季の川崎Fはこれまで以上に相手を圧倒することを目指し、開幕戦で示したようにボール回収力を向上させている。攻撃機会は以前よりもさらに増えるはずだ。厚みのある攻撃と即時奪回を繰り返す中で、家長はいったい何度、ネットを揺らすことになるのか。

「(年長者となったことで)チーム内の役割も、本当にそこまでは大きくは変わらないですが、やっぱり責任感とかは変わらず持たないといけない。一番上の選手がしっかり頑張れば、自ずとチームが引き締まるのかなと思ってやっています」

 中村憲剛が引退し、フィールドプレーヤーでは最年長になった。「しっかりやれば引き締まる」との言葉には覚悟もにじむ。

「心境の変化は、まだそんなに感じてないです。ただ一年間やっていく中でどんどん感じていって変わっていくだろうと期待しています」

 今シーズン、家長の凄みを、われわれは何度もピッチで確認することになりそうだ。

取材◎佐藤 景


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