2月26日、明治安田生命J1リーグ開幕戦(1節)が開催された。2021年シーズンのオープニングマッチに選ばれたのは2020年王者・川崎フロンターレと2019年王者・横浜F・マリノスの一戦。神奈川ダービーとしても注目された試合は川崎Fが2-0で快勝した。

上写真=開幕戦で2得点を挙げ勝利に貢献した家長昭博(写真◎小山真司)

■2021年2月26日 明治安田生命J1リーグ第1節(@等々力陸/観衆4,868人)
川崎F 2-0 横浜FM
得点:(川)家長昭博2

・川崎Fメンバー:GKチョン・ソンリョン、DF山根視来、ジェジエウ、谷口彰悟、旗手怜央、MFジョアン・シミッチ(64分:橘田健人)、脇坂泰斗(76分:車屋紳太郎)、田中碧、FW家長昭博(88分:知念慶)、レアンドロ・ダミアン(76分:小林悠)、三笘薫(88分:長谷川竜也)

・横浜FMメンバー:GKオビ・パウエル・オビンナ、DF岩田智輝(73分:松原健)、チアゴ・マルチンス、畠中槙之輔、ティーラトン(73分:高野遼)、MF和田拓也(88分:渡辺皓太)、扇原貴宏(46分:水沼宏太)、天野純、FW仲川輝人、オナイウ阿道、樺山諒乃介(46分:前田大然)

目を見張るボール回収力

 戦前、鬼木達監督は相手がどうこうではなく、「自分たちのサッカー」をいかにピッチで表現するかがポイントになると話していた。結論から言えば、川崎Fは攻撃面、守備面ともにスキのない戦いぶりを披露した。

 目を見張ったのは、まずボールを回収する力だ。ロストした瞬間に状況に応じて動き、横浜FMのビルドアップをことごとく阻止していく。例えばシュートを持ち込めずにボールを失うやレアンドロ・ダミアンはすぐにスイッチを入れ直して相手ボールホルダーへ襲い掛かった。ドリブルで持ちこもうとして引っかかった三笘も、瞬時に守備者となって取り返しにかかる。第1守備者がかわされても、第2、第3の守備者が現れ、相手のパス回しを阻止していく。その迫力たるや昨季以上。そしてボールを回収すれば、一気に前に出てみせる。

 何のための守備か。何のためのボール奪取か。ゴールという目的のために、守備から攻撃に切り替わった瞬間、川崎Fの選手たちは一斉に動き出した。最適解を瞬時に共有してールを目指す様は、王者の進化を示してもいた。21分、先制ゴールを挙げたのも、やはり川崎Fだった。

 相手DFからGKオビ・パウエル・オビンナにバックパスが出ると、L・ダミアンが猛然とダッシュ。蹴り出されたボールを足に当て、こぼれ球を拾ったティーラトンや畠中にもプレスをかけて、相手のつなぎを制限した。左から右へとボールを逃がす横浜FMに対しても複数人がプレッシャーをかけて、連動したプレスで追い込んで扇原のパスミスを誘った。三笘がカットに成功すると、逆サイドへと展開。家長、脇坂、田中とつなぎ、右のライン際で再びボールを引き取った脇坂が、後方からボックス内に走り込んだ山根に浮き球パスを出す。飛び込んだ山根が右足ヒールでボールを後ろに残し、そこへ走り込んだ家長が左足を一閃。見事なパス交換から豪快にネットを揺らした。

 2点目は43分だ。脇坂の右CKはクリアされたものの、こぼれ球を拾った仲川にL・ダミアンがプレッシャーをかけて前にボールを蹴らせず、ボックス内のチアゴ・マルチンスに横パスを出させる。さらにチアゴにはシミッチがプレッシャーをかけて苦しい態勢でクリアさせた。そのクリアを田中が拾い、脇坂、L・ダミアンと連続でワンツー。右サイドを抜け出して高速クロスを送ると、家長がヘッドでこの日2点目を決めた。

 前半に2点のリードを奪ったのは20日の富士ゼロックススーパーカップ(対G大阪)と同じだ。同試合では後半に一度は追いつかれることになったが、この日は違った。3ゴール目を狙いにいきつつ、守備でも集中を切らさなかった。最後までリードを守って試合をしっかりクローズしてみせた。

「2021年のJリーグ開幕ゲームを戦えたことをうれしく思っていますし、ホームの等々力で選手が今持っている力を存分に出してくれました。2点目とったあと、3点目を取れればよかったですけど、ゼロに抑える気持ちが伝わったので。ここから一つ一つ勝ち進んでいきたいと改めて思いました」

「守備のところ、囲い込みのところは選手に強調しながら試合に入りました。相手が攻撃的なチームですけど怖がらずにすごく前へ、前へという意識でやってくれました。後半は体力的に落ちて、少し引いてしまう場面もありましたが、それでもゼロックスのときにあそこから2点取られたことを考えるとしっかりとゼロで抑えて、勝ち切ったことは凄く評価したい」

 鬼木監督は選手のプレーと姿勢を評価した。ここ2年間は開幕戦を引き分けていたが、この日は会心の勝利でシーズンをスタート。最高の形で連覇へ走り出した。

 対する横浜FMも、守備時に4バックを形成し、攻撃時に3バックに可変してビルドアップを試みる新しい形で試合に臨んでいた。キャンプから試してきた形だったが、川崎Fの猛烈なプレッシャーの前に機能せず。後半はメンツを替え、陣形も4-4-2に変えて幾分、持ち直したものの、ついぞゴールは奪えなかった。ポステコグルー監督は「良いゲームではなかった。自分たちのサッカーもできず、自分たちのやろうとしていことがまったく出せなかった残念な試合だった」と悔み、ここから仕切り直すことを誓うしかなかった。

 新旧王者対決としても注目され、どちらが「自分たちのサッカー」を表現できるか注目された試合は、川崎Fの完勝に終わった。オープニングゲームはそのシーズンを占う一戦ともいわれる。だとすれば、この夜に刻まれたのは、今季も『フロンターレ強し』という鮮烈な印象だった。

現地取材◎佐藤 景 写真◎小山真司


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