明治安田生命J1リーグは12月19日についに最終節を迎える。川崎フロンターレは王者として堂々と柏レイソルとのアウェーゲームに向かっていく。ここでも変わらず、鬼木達監督の流儀のとおりに勝って、そして記録を上積みする。

上写真=勝ち点、得点、新人最多得点と柏戦は見どころが多いが、鬼木達監督はいつも通りに臨む(写真◎J.LEAGUE)

「チャンスがあれば狙ってほしいと思いますけど」

 J1第33節の浦和レッズ戦で小林悠が決めた川崎フロンターレの3点目が、実にシーズン85ゴール。鬼木達監督の現役最終年だった2006年に川崎Fが記録した84というシーズン最多得点記録を見事に塗り替えた。

「(2006年と比べて)得点の仕方もぜんぜん違うので何とも言えませんが、どちらがいいということではなくて、そのときそのときの選手の個性がしっかり出たゴールだというのは見ている人も楽しいと思いますし、チームでのコンビネーションを含めて質の高いものを見せる面白さもあります。強さという意味ではどちらというのはないですが、いま自分たちは自分たちらしいストロングポイントを出せていて、取って取られてではなくて取られないことにも気持ちを持ちながらやっているので、当時とは違った戦いをしているのかなと思っています」

 当時はブラジル人の快足FWジュニーニョが20得点、日本人エースの我那覇和樹が18得点と、自慢の2トップで量産し、そこに谷口博之が13ゴール、中村憲剛が10ゴールで続いていた。今年は小林悠の14、三笘薫の13、レアンドロ・ダミアンの12のほか、家長昭博の9、旗手怜央と田中碧が5ずつ決めている。

 鬼木監督の言うように、当時と大きく異なるのが失点の部分。2006年は失点は55もあったが、今季は29しかなく、得失点差は驚異の+56だ。当時のチームとの一番の違いをそこに見ることができるだろう。

 勝ち点記録はすでに更新中で、現在80。最終節の柏レイソル戦に勝てば83まで伸ばすことができる。鬼木監督が狙うのはそこだ。まずはチーム一丸となって目の前の勝利を奪う、というこれまでどおりの姿勢は崩すつもりはないから、勝ち点のためにというよりは勝利のために、ではあるが。

「勝ち点はなかなか見られない数字なので、もう一つ上のところにいきたいと思います。得点についても、簡単な相手ではないので難しいですが、いつも3点以上を目指してやっているので」

 つまり、これまでの勝利への、ゴールへの貪欲さが数字となって積み上がっているわけだから、そのまま続ければいいというわけだ。

 もう一つ、注目を集めるのが三笘薫のJ1新人選手の最多得点記録だ。浦和戦で決めた逆転ゴールが13ゴール目となって、渡邉千真(当時横浜F・マリノス、現ガンバ大阪)、武藤嘉紀(当時FC東京、現エイバル=スペイン)についに並んだ。三笘本人は「決められるところで決めたい」と話していて、鬼木監督もこれまでと同じ態度で見守っていく。

「本当に素晴らしいことだと思います。でも、チームの勝利があってこそで、それは本人も理解していると思います。チャンスがあれば狙ってほしいと思いますけど、まずはチームのためにと言うか、それが必ず返ってくると言っているので、そういう気持ちでやっていけば結果が出ると思います」

 見る側はつい記録達成の瞬間ばかりを楽しみにしてしまうが、いずれにしろフォーカスする部分を間違えなければ記録は自然とついてくる、というのが鬼木監督の流儀だ。

 柏戦を終えれば、天皇杯準決勝が12月27日に待っている。鬼木監督は「まだ考えていません」と慎重だが、複数タイトルという目標のために、まだまだ指揮官は休むつもりはない。


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