12月16日、明治安田生命J1リーグ第33節が開催された。等々力陸上競技場では川崎フロンターレと浦和レッズが対戦。前半、PKで失点した王者・川崎Fだが、後半に3ゴールを集めて逆転。中村憲剛のJ1ラストゲームを勝利で飾った。

上写真=1アシストを記録した中村憲剛(右)と阿部勇樹(写真◎J.LEAGUE)

■2020年12月16日 明治安田生命J1リーグ第33節(@等々力/観衆11,387人)
川崎F 3-1 浦和
得点:(川)守田英正、三笘薫、小林悠
   (浦)興梠慎三

・川崎Fメンバー:GKチョン・ソンリョン、DF山根視来、ジェジエウ、谷口彰悟、登里享平、MF守田英正、脇坂泰斗(80分:旗手怜央)、中村憲剛、FW家長昭博(88分:田中碧)、小林悠(80分:レアンドロ・ダミアン)、三笘薫(90+2分:長谷川竜也)

・浦和メンバー:GK西川周作、DF岩武克弥、橋岡大樹、岩波拓也、宇賀神友弥(62分:山中亮輔)、MF柴戸海、阿部勇樹(62分:エヴェルトン)、マルティノス(72分:汰木康也)、武田英寿(56分:長澤和輝)、FW武藤雄樹、興梠慎三(72分:杉本健勇)

ピッチに描かれた金看板のホットライン

 今季限りで引退する中村憲剛のJ1のホーム最終戦。フロンターレサポーターの誰もが期待した光景は、後半の61分に訪れた。

 連動したプレスで前からプレッシャーをかけてバックパスをさせると、ボールは浦和のGKの西川まで戻された。さらに小林がプレッシャーをかけて、ロングボールを蹴らせる。そのボールの落下地点でジェジエウがヘッドで競ったところからフロンターレのパスワークは始まった。

 ジェジエウが頭で後方に送ったボールを山根が拾って、再びジェジエウ、谷口とつなぎ、下がってきた中村へ。中村はワンタッチで守田にはたくと、守田もワンタッチで左前方の登里へボールを送った。

 三笘が縦に走って相手DFを引っ張り、登里は余裕を持って、ピッチを左から右へ横断するパスを出す。ピッチ右寄りの位置でボールを収めた家長は、そこから細かいパス交換を繰り返した。家長→山根→家長→中村→家長→脇坂→中村→山根→家長とパスはつながり、複数の選手が絡みつつ、攻撃の糸口を探っていく。そしてパス交換の間に相手DFの空けたスペースに入り込んだ中村へ、家長から縦パスが入った。

 次の瞬間だった。右サイドラインの方を見ながら半身でボールを受けた中村は、間髪入れずに右足を振り抜き、ゴール方向へ低く速いボールを送る。中村の背後に付いていた浦和の阿部も反応できないタイミング。しかもノールック。

 このボールに反応していたのが、中村の盟友、小林だった。相手CBの橋岡よりも先にボールに触り、見事にネットを揺らす。鬼木達監督も「阿吽の呼吸」と称したゴールだった。

 この日、川崎Fは前半11分にGKチョン・ソンリョンが岩武を倒してPKを献上。開始早々にビハインドを背負って試合を進めることになった。最初の45分間はなかなかいい形を作れなかったが、後半は圧力を強めて好機をつかんでいく。53分に守田がミドルシュートでゴールをこじ開けると、さらにアグレッシブな姿勢を見せて59分に逆転に成功する。家長、脇坂、山根で右サイドを攻略し、クロスにフリーの三笘が頭を合わせた。

 その2分後に、前述の小林のゴールは生まれている。ジェジエウのヘディングから数えると、実に17本のパスがつながっていた。まさにフロンターレらしいゴール。しかも、この試合は今季限りで引退する中村にとってのJ1ホーム最終戦。フロンターレの歴史を築いてきたバンディエラがアシストし、同じくそのパスによって幾多のゴールを生んできたエースストライカーが決めた。

「あの瞬間というのは分かり合っている二人にしかできない得点でした。長年やっている、研ぎ澄まされたところが出たなと思います。(クロスを)上げた憲剛もそうですし、あそこのタイミングで入っていった悠もそうですが、僕らは毎回も見ているのでわかりますけども、それを試合に中でやれたというのは素晴らしいこと。ホームの最終戦でそういう二人の姿を見せられたのはよかったんじゃないかなと思います」

 鬼木達監督も称賛したフロンターレの金看板、中村と小林によるホットラインがピッチに描かれた。

「まずホーム最終戦ということで、今日は選手たちに勝つことがすべてだという話をしました。難しいゲームに自分たちからしてしまったところはあるんですけども、最後の最後まで焦れずに我慢強く戦い続けたこと、自分たちがやって来たことを出し続けたこと、それが勝利に結びついたと思います。選手の頑張りがすべてでした。ホーム最終戦ということで多くの方が来ていただいて、ビハインドの状態から3点取れたことを、選手とサポーターに感謝したいです」

 指揮官はそういってチームとサポーターを称えた。この一戦を前にして「今の集大成を見せたい」と話していたが、アグレッシブなプレス、パスワーク、崩し、サイド攻撃で後半に畳みかけて3ゴール。2006年に他ならぬ川崎Fが記録したシーズン最多得点の84点を更新して総得点を85点まで伸ばし、逆転勝利を飾った。王者の、まさしく2020年のフロンターレの力を示したJ1ホーム最終戦だった。

現地取材◎佐藤 景 写真◎J.LEAGUE


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