ヴィッセル神戸は10日、カタールで開催されているAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の準々決勝、水原三星戦に臨んだ。ラウンド16の試合で負傷したイニエスタが先発を外れ、相手に先行される苦しい展開も、神戸は古橋亨梧のFKで追いつき、延長戦を戦い抜いてPK戦の末に4強進出を果たした。

上写真=同点となるFKを決めた古橋亨梧(写真◎Getty Images)

■2020年12月10日 ACL準々決勝
(リモートマッチ/@カタール・アルジャノブ スタジアム)
神戸 1-1(7PK6) 水原三星
得点:(神)古橋亨梧
  (水)パク・サンヒョク

・神戸メンバー:GK前川黛也、DF山川哲史、菊池流帆、トーマス・フェルマーレン、酒井高徳、MF山口蛍、郷家友太(113分:アンドレス・イニエスタ)、安井拓也(91分:藤本憲明)、FW西大伍(46分:小田裕太郎→77分:初瀬亮)、ドウグラス、古橋亨梧

・水原三星メンバー:GKヤン・ヒョンモ、DFチャン・ホイク、ミン・サンギ、ヤン・サンミン、キム・テファン、イ・キジェ、MFハン・ソクジョン、キム・ミヌ、パク・サンヒョク(46分:ク・デヨン→110分:パク・デウォン)、FWイム・サンヒョプ(46分:キム・ガニ)、コ・サンボム

イニエスタはベンチスタート

 日本勢で唯一、準々決勝に駒を進めた神戸は、ラウンド16の上海上港戦で負傷したイニエスタがベンチスタート。イニエスタのポジションである左のインサイドMFには安井が入り、4-3-3のフォーメーションで試合に臨んだ。

 開始直後、神戸は主導権を握れず、相手の鋭い出足に苦しむことになる。人を捕まえられず、サイド攻撃を浴びると、7分にいきなり失点してしまった。自陣左サイドからコ・サンボムにクロスを入れられ、パク・サンヒョクにニアで触られてゴールを割られた。

 警戒していたサイド攻撃を許し、欲しかった先制点は相手のものとなった。神戸としては最悪の立ち上がりだったが、チームはここから立て直しを図る。ベクトルを前に向けるアグレッシブな守備を実践し、しっかりスペースに人が走って攻撃を形づくっていった。

 1点を先行した水原がやや受けに回ったこともあり、15分過ぎからは神戸がボールを握った。ただ、相手が重心を下げたため、ブロックの外でボールを回す場面が目立ち、決定的な場面は生み出せない。ボールを回せど、ゴールは生まれない嫌な展開だった。

 そんな状況を変えたのは34分のことだった。ドウグラスが浮き球を相手最終ラインの裏に送ると、西が抜け出す。ボックスに差し掛かったところで相手に倒された。主審はPKを宣告する。神戸に同点のチャンスが訪れた。

 直後、この準々決勝から採用されているVARで主審が一連のプレーを確認。キム・テファンが退場となり、PKは取り消し。ボックスすぐ外からのFKに判定が変更された。神戸にとっては同点のチャンスを失ったかと思われた。だが、この場面で古橋が大仕事をやってのける。FKのキッカーを務めて相手の裏をかくように壁の下に鋭いボールを通し、見事にネットを揺らしたのだ。

 一人多い状況となり、前半のうちに同点。後半は神戸が優位に試合を進めると思われた。しかし、割り切って守りつつ、カウンターに出る水原を攻めきれない。ドウグラスや古橋に好機が訪れたが、決められずに試合は90分で決着つかず、1-1のまま延長戦に突入した。

チーム力を確認し、自信を得た120分

 延長前半の95分には初瀬のクロスに古橋が頭を合わせてコースを変えたシュートがポストに嫌われ、96分には古橋のクロスをゴール正面でドウグラスがフリーでシュートするも、ピッチに足を取られてミートできず、相手DFにクリアされてしまった。延長後半106分にはドウグラス、藤本とつないだボールを古橋がゴール正面からシュートするもわずかに枠を外れた。神戸に決定機がなかったわけではないものの、勝負を決めることができなかった。

 延長後半には郷家に代えてイニエスタを投入するが、状況は変えられず。逆に延長後半終了間際には水原の猛攻を受け、ゴールライン上でキム・ミヌのシュートを山口がクリアし、続くコ・サンボムのシュートはポストに当たって、救われた場面もあった。

 結局、120分でも決着はPK戦に委ねられることになった。先行の水原は6人目まで成功し、後攻の神戸も1人目のイニエスタから、ドウグラス、初瀬、古橋、山口、山川と6人が成功。迎えた7人目、水原のキッカー、チャン・ホイクが枠の上は外したのに対し、神戸のキッカー、藤本はゴール右にきっちり決めてみせる。PK戦までもつれた壮絶な試合を神戸が制し、ベスト4に進出した。

「水原は1人少ない中でも粘り強い守備見せ、われわれも得点を狙って決着をつけるために全力で戦った試合になりました。両チームにとって非常にいいゲームになったんじゃないかなと思います」

 相手の称えた上で激闘を振り返り、「いいゲームだった」と三浦淳寛監督は話した。

「チームコンセプトがしっかりしているという中で、選手が毎日のトレーニングの中で一つ一つ積み重ねてきた結果が今、こういう形になっているんじゃないかなと思っています。もちろん、初めからうまくいくとは思っていなかったですが、ACLに向けて、若手の成長とチーム全体の底上げを意識しながらやってきました。Jリーグに関しては非常に難しい時間がありましたが、たとえ結果が出なくてもそこはブレずにやっていこうと、覚悟をもってやってきたことの一つ一つの積み重ねが、チームワークにつながり、チームが一つになり、この結果につながっていると思います」

 そして指揮官は、積み重ねてきたことが今、形になっていると強調した。

 アジアナンバーワンクラブを目指す神戸は、ついにあと2勝で目標を達成できるところまで来た。準決勝の相手は蔚山現代(韓国)。試合は13日に行なわれる。120分を戦い抜いたあとで、中2日で臨むのは相当に過酷だが、試合のたびに結束し、タフになった神戸のモチベーションは、高い。


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