川崎フロンターレが優勝を逃した。明治安田生命J1第28節の大分トリニータ戦で勝てばその場で優勝が決まる一戦は、谷口彰悟の退場があり0-1で敗戦。代わってセンターバックに移った守田英正は、これまでと変わらない心持ちを強調した。

上写真=守田英正は大学生以来というセンターバックに途中から入ってプレー。堅固に守った(写真◎J.LEAGUE)

■2020年11月21日 J1リーグ第28節(@昭和電ド/観衆9,820人)
大分 1-0 川崎F
得点:(大)野村直輝

「後半は自分たちのらしさは出た試合だと思う」

「勝てば優勝」の試合で、負けた。

 もちろん、悔しいに決まっている。守田英正は「自分たちの力で優勝が決まる試合でしたけど、うまくいかず負けてしまいました」と嘆く。ただ、今年のチームが成熟していく過程にあって、多くの選手が口にしていた言葉を、悔しさを押し殺しながらつぶやいた。

「一喜一憂せずに切り替えて、次の試合に向けていい準備をしたいと思います」

 中村憲剛が負傷から復帰して驚いたロッカールームの風景が、喜びすぎず、落ち込みすぎず、の「一喜一憂しない」態度だったのだと話していた。大分に土をつけられてこの時点での優勝を逃しはしたものの、ここまで積み上げてきたものすべてが壊れるわけではないから、守田も一喜一憂しないのだ。

 大分トリニータとのアウェーゲームは、34分にキャプテンの谷口彰悟が退場処分を受けたことで難しくなった。この日はジェジエウを累積警告による出場停止で欠いていて、今度は谷口。今季、鉄壁の守備を誇ってきたセンターバック2人がピッチにいないという緊急事態だ。

 鬼木達監督は4-3-3で始めながら状況に応じて4-2-3-1に微調整していた布陣を、4-3-2のような形に整理した。最終ラインの人数は変えずに守田をセンターバックで起用したのだ。

「大学時代に1年ぐらいセンターバックをやったので、不安はなかったです」と堂々と最終ラインに立ったが、意識したのは「1人少ない中で負けている状況を考えたとき、一番大事なのは失点しないことです。連続失点してはいけないので、ビルドアップの安定も含めてですが、失点しないように」ということ。結局、退場シーンで与えたPKを決められたほかは、ゴールは許さなかった。

 鬼木監督は選手交代を活用して、攻め抜く姿勢を最後まで選手に植えつけた。右サイドバックの山根視来をFWレアンドロ・ダミアンに代えた79分からアディショナルタイムが5分あった試合終了までの20分以上は、右サイドバックにFW旗手怜央が入り、のちにMF田中碧にスイッチさせた。慣れないポジションに入っても「攻める」という絶対基準が崩れなかったことで、旗手も田中も効果的な攻撃を繰り出していった。

「どのポジションをやってもやるべきことは変わらなくて、選手としてはできなければいけないので。自分のポジションじゃなくてもいざ出されたときにどの程度のパフォーマンスができるかは、その選手の価値につながっていきます。僕自身のセンターバックもそうだし田中碧や旗手怜央のサイドバックも、傍から見ていたらすごいことをやってるんじゃないかと思われるかもしれないけれど、練習から積み重ねてやってきている分、何をしたら相手が嫌がるかは分かっているので、共有しながらプレーできたと思います」

 後半は実際その通りに、大分の嫌なところを突いて押し込んで、何度もゴールに迫っていった。

「後半にプレーした選手たちは頼もしかったですね。人数が少なくても自信を持ってつないで、走って、選手を信じてプレーすることが連続でできていました。ただ、後半の流れを前半にやっていればとは思わないし、そんなに簡単なことじゃないので。前半はなんで相手にペースを握られて自分たちのサッカーができなかったのかは持ち帰って改善すべきですし、ただ後半は自分たちのらしさは出た試合だと思うし、チャンスを作らせずに攻撃できたので、すごく内容が良かったと思います」

 この大分戦で0-1のまま敗れたことを受けて、11月22日の浦和レッズ対ガンバ大阪戦でG大阪が引き分け以下であれば、優勝が決まる。

「優勝が決まる決まらないの前に、この敗戦を踏まえて次はホームなので勝ちにいきたいと思います。優勝が決まっていてもいなくても、次のガンバ戦に向けていい準備をしたい」

 ここでも、このシーズンで持ち続けてきた「一戦必勝」の構えだ。変わらないことは川崎Fの強さ。それを最後まで見せるつもりだ。

写真◎J.LEAGUE


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