明治安田生命J1リーグでは首位を独走する川崎フロンターレの次の座を狙う戦いが熾烈だ。そこに挑む一つが名古屋グランパス。ライバルより消化試合数が多いだけに、残り試合で「ギアをもう一つ上げていく」と吉田豊も意識を高める。

上写真=負傷者も出ているが、FC東京に勝ったこともあり、吉田豊の表情も明るい(写真◎スクリーンショット)

「時間の使い方は毎試合良くなっている」

 29試合を終えて勝ち点52の暫定3位。名古屋グランパスはもう一つ順位を上げるための作業を、残り5試合で突き詰めていく。

「今年はすごく難しいシーズンの中で、グランパスはケガ人も出ていながらしっかりと準備してやるべきことやった上で、いい順位につけています」

 そううなずくのは、吉田豊だ。

「残り試合も引き続き、というより、ギアをもう一つ上げて、一つになってやればもっといい勝ち点を積み上げることができると思います。もう1回引き締めてやることが重要です」

 勝ち点55で暫定2位のガンバ大阪とはわずか3ポイント差だが、消化試合数が名古屋より1試合少ないのが気になる。さらに不気味なのが暫定5位のセレッソ大阪で、こちらは勝ち点49ながら消化試合数が2試合も少ない。

 だからこそ、取りこぼしは許されない。吉田が「ギアを上げる」と言うのは、現状維持の気持ちでは全勝を狙えないという危機感の表れだ。

 川崎フロンターレに次いで失点がリーグで2番目に少ない27という守備力が、これからも礎になりそうだ。

「毎試合ゼロで抑えれば負けることはないですし、攻撃陣は必ず点を取ってくれますから。僕も厚みを持って攻撃に参加できればいいですし、いい守備からいい攻撃につなげられるように全力でやっていきたいと思います」

 マッシモ・フィッカデンティ監督の守備に対するフィロソフィーがチームに浸透していて、吉田は左右両方のサイドバックとしてそこに大きく寄与してきた。それは、単に守備力が高くなった、という意味ではない。流れに即した試合運びができるゲーム・マネジメントの進歩の成果だと感じている。

「時間の使い方は毎試合良くなっていると感じています。振り返ってみると、立ち上がりの5分や最後の5分にボールが途切れたときの集中の部分、あるいは引き分けで勝ち点を持ち帰ろうと割り切って一体となったゲームも最近多いですね。はじめの頃はそこを無理にこじ開けようとしていたようなことが時間帯によってはあって、そこは修正して改善してきている点かなと思います」

 直近のFC東京戦でもそれを表現してみせた。特に「最後の5分」のところでは、アディショナルタイム3分に右からマテウスがカットインしてシュートを放ったボールが、相手の手に当たってPKを獲得することができた。まさに集中の賜物だろう。

 この試合では金崎夢生と山崎凌吾のFWを負傷で欠き、阿部浩之とガブリエル・シャビエルと2人のMFがFW的な役割を務める戦い方になった。

「シャビエルにしても阿部ちゃんにしても、前にいることによって相手のセンターバックのポジションが変わりますし、どんなボールであれ、2人に入ったらキープできるのでタメが作れます。そうすることで(サイドハーフの)マテウスや(前田)直輝がスペースを使えるようになりました。相手にとっては背が高くても低くても、真ん中にいることが嫌なのかなという感じでしたから、どちらかは前にいるようにしました」

 これまでFWとして存在感を示してきた選手がいなくても、柔軟に対応してチーム全員で共有して、勝利を収めることができる。チーム力の高さはこんなところにもうかがえる。

「守備の部分は特にやり方は変わりなくて、ビルドアップ、攻撃につなげるパスの種類はなるべく浮き球より足元につけることを心がけましたね。クリアに関しても相手のディフェンダーがヘディングでクリアしやすいボールよりは、思い切り上の方に蹴って処理しにくくなるように心がけました」

 そんなディテールにこだわったことも、勝利への道標だっただろう。

 湘南ベルマーレ、大分トリニータ、柏レイソル、横浜FC、サンフレッチェ広島。残りは自分たちよりも下位のチームとの対戦ばかり。なおさら勝ち点を落とすような戦いはしたくない。さあ、ギアを上げていこう。


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