J1第21節のベガルタ仙台戦で、川崎フロンターレの中村憲剛がケガから復帰してから最長となる67分間をプレーした。台風14号の影響で雨と風が強く、ヒザをケガした立場としては心配もあったが、しっかりやり抜いてまた自信をつけた。

上写真=復帰3試合目は67分のプレー。徐々にリズムをつかんできた(写真◎J.LEAGUE)

■2020年10月10日 J1リーグ第21節(@等々力:観衆8,263人)
川崎F 1-0 仙台
得点:(川)小林悠

「練習します!」

 13分。45分。67分。中村憲剛の完全復活への道のりは順調のようだ。復帰戦となった8月29日の第13節清水エスパルス戦は途中から出場して13分プレー。9月23日の第18節横浜FC戦では先発出場して前半をすべてプレー。そして10月10日、第21節のベガルタ仙台戦で再び先発し、67分間、ピッチで存在感を見せ続けた。

「最初のエスパルス戦よりも明らかに怖くなくなっているし、強い雨と風の中でもしっかりできました。みんなとはちょっとベクトルが違う目的のところもあるんですけど、そういうケガだったので、気にせずやれてよかったです」

 表情は非常に明るい。徐々に体をフィットさせていくプログラムの中で、前回から2週間強のタイミングでの起用ということだったのだろう。ただ、苦しい状況にあったこの試合でこそ、百戦錬磨の男の力をチームが欲していたのではないか。3日前にルヴァンカップ準決勝でFC東京に敗れ、タイトルを一つ失った直後のゲームだ。口にはしなくとも、個々に少なからずダメージはある。だからこそ、中村が見せる態度に期待されたとしても不思議ではない。

「僕自身、ここまで18年の間に悔しい負けを繰り返してきて、そのあと一発目は簡単ではないのは承知の通り。でもね、メンタルのところは自分たち次第なんですよ。今回はこちらは中2日で相手は1週間をかけて準備してきたこともありますから、しっかり勝ちきれることがポイントでした。勝つことがすべての試合でした」

 だから、そこにいるだけで仲間は安心したことだろう。攻めに攻めながら点が入らずに「攻め疲れ」してしまいそうなところを、この大ベテランはしっかりと川崎Fのサッカーに追いつこうと必死でプレーした。その一生懸命な背中が、頼もしく映った。

「勝つことがすべてだと言っても、フィニッシュの質を高めれば点は取れたわけで、そうすれば苦しい時間もないままに勝てたと思います。そこは突き詰めるところだとみんなで話して、ポジティブに考えたい。あの負けのあとで、今日は(2位と3位の)FC東京もセレッソも負けたと情報が入ってからの試合だったという難しさもあって、その中で勝てて成長したと思います」

 フィニッシュの質という部分では、一つだけ悔やまれるシーンがある。51分に三笘薫が倒されて得たFKの場面。ペナルティーエリアのすぐ外、中央より少し左側のところにボールをセットした。相手の壁の前に大島僚太、旗手怜央、車屋紳太郎を中腰で立たせた。右足で回転をかけ、その上を越えて落としたシュートは……惜しくもバーを叩いた。その瞬間、ものすごい悔しがりようだった。

「練習では決めてたんですよ。でも、ちょっと近かったかな。あれを決められればまた価値が上がってくると思うので、練習します!」

 もう「様子見」の時期は終わったと認識しているという。トレーニングの成果は次に出場する試合でさっそく見せてもらえるはずだから、楽しみに待つことにしよう。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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