頼もしい頭脳派MFが帰ってきた。JリーグYBCルヴァンカップ準々決勝のFC東京戦でケガから復帰、明治安田生命J1リーグ第14節の鹿島アントラーズ戦でも途中から登場した阿部浩之。停滞気味のチームを活性化させる意欲に満ちている。

上写真=リーグ戦は鹿島戦で復帰。独特の視点でチームを動かしていく(写真◎J.LEAGUE)

「全部に顔を出さないと」

 3試合で得点が1。負傷するまでは攻撃のタクトを振ってきた阿部浩之にとっては、「うまくいっていない部分は挙げたらきりがない」と感じている。

 9月2日のJリーグYBCルヴァンカップ準々決勝のFC東京戦で79分からピッチに入って、ついに復帰、続く5日のJ1第14節・鹿島アントラーズ戦では66分から出場した。7月22日の第6節・大分トリニータ戦で負傷して以来の戦列復帰。およそ1カ月半でのリハビリ期間で、多くのことが見えたのだという。

「一つはいい攻撃をするためのサポートのし合いというか、使われなくてもいいからスペースを開けるような動きをするところが足りません。何人かの連動した動き出しがないというか、ボールと関わる人だけではなくて、3人目がしっかり受けに来たり、パスが出てこなかったとしても裏に入っていったりすれば、ディフェンスは間延びすると思うんです」

 具体的に言うと、金崎夢生をめぐるボールの動かし方が挙げられるという。

「夢生くんに当てることが多いと思いますが、そこは相手が分析して抑えてきます。そこのサポートの質がまだまだ低いと思いますし、夢生くんに入れるふりをして誰かが裏を狙ったりすることも大事です。出す側もそこからさらに次の展開を予測しながら出さないといけないんです。3人目の動きもそうですけど、一度出してもそこから展開できないなら出さないほうがいいと個人的には思います。だから、僕が入ったら全部に顔を出さないと、と思っています」

 連戦による疲労で足が動かない、という面もあるが、阿部が主張するのは「だからこそ」の考え方だ。

「僕は、疲れているからこそ事前にやっておけば、スプリントしなくて済むな、という考えなんです。いまは自分たちで自分たちの首を締めているところがあって、余計に疲れちゃう。僕がそういうところをやっていけば、みんなゴール前でパワーを使えると思っています」

 ちょっとした発想の転換がブレイクスルーを生む。まさしく阿部の奇想天外なセンスに基づいた楽しいプレーそのものだ。

 だから、2試合で6失点の守備も「大きく変える必要はないです。守ることができたときの感覚を大事にして、一つひとつやっていけば大丈夫。試合の中で相手選手の誰が出るかによっても守り方は変わってくると思うので、臨機応変にできればいいんです」と悲壮感はない。むしろ、あえて守備の方に引き込んでしまうのも一計だ、と明かす。

「特にうちの両サイドのウイングは、そういう状況(広いペースを使える)こそ最大限に力を発揮できると思っています。わざと攻めさせて、というのは、試合は90分あるのでアリかな、と。後ろで少し休んでしっかり奪ってそこから出ていく、というのは、相手にも脅威になります。もちろん、前で取れればベストですけど、取れなければしっかり守りながら取った瞬間に相手陣形が整っていないときに攻めればいい。だから、相手に攻めさせることも必要かと思います」

 さすがは知的なプレーメーカー、と思わせる冷静さとアイディアが続々と出てくる。阿部の知性で、名古屋がここから再浮上する。


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