鹿島アントラーズは26日、アウェーのFC東京戦に臨み、2-1で勝利を飾った(J1第26節)。リーグ戦で4試合ぶりとなる白星獲得に貢献したのが、右サイドハーフで先発したブラジル人MFファン・アラーノだ。1得点1アシストの活躍だった。

上写真=逆転ゴールを決めて絶叫するファン・アラーノ(写真◎J.LEAGUE)

■2020年8月26日 J1リーグ第26節(観衆4,390人/@味の素)
FC東京1ー2 鹿島
得点:(F)OG
   (鹿)エヴェラウド、ファン・アラーノ

練習で繰り返しやっている形

 勝利の立役者と言っていいだろう。エヴェラウドが決めた同点ゴールをお膳立てして、逆転ゴールは自ら決めた。ここまでノーゴールだったのが不思議なくらい。この日、ピッチで勇躍したファン・アラーノはスタートから83分にベンチに下がるまで、常にゴールを生み出す雰囲気を醸し出していた。

 先発して務めたポジションは右サイドハーフ。相手がアンカーシステムを採用しているため、サイドに張ったままでいるよりは内側に入り、いわゆる『アンカー脇』のスペースで頻繁にプレーした。それは同サイドでタンデム(縦関係)を組む小泉慶の攻め上がりを促すと同時に、相手の混乱を誘発した。相手のサイドバック(SB)が見張るのか、アンカーがケアするのか、はたまた相手の左センターバックがつかまえるのか、何ともファジーな位置取りで、たびたびFC東京守備陣の監視を逃れることになった。

 同点ゴールの場面も、この位置取りが大きく関係している。左からのビルドアップに合わせて中に絞っていたファン・アラーノはピッチ中央でボールを引き取り、高い位置まで進出していた右SBの小泉へ展開。自分のポジションから大きく動いたことで自身のマークがいない状態となっていたファン・アラーノは再び右サイドのやや内側で小泉からのリターンを受けると、フリーな状態から狙いすましてエヴェラウドに浮き球を送った。もちろん、相手DFよりも頭一つ抜け出てシュートしたエヴェラウドの技術も、ドンピシャのボールを届けたファン・アラーノのキックも見事だが、そこに至る過程でチームがしっかり連動し、相手の監視が届かない場所と時間を作り出していたことも見逃せない。同点弾は、こうして生まれた。

 ファン・アラーノが自ら決めた2点目もまた、位置取りと連係の賜物だ。左サイドハーフの荒木遼太郎がやや内側に入って監視を逃れた瞬間に三竿健斗からの縦パスを受けて前を向き、ドリブルを開始。それに合わせてファン・アラーノは斜めに走り出した。走り込んだコースは、相手左CBのジョアン・オマリと相手左サイドバック小川諒也の間。この2人のDFがその存在に気付くよりも早く荒木がパスを出すと、ファン・アラーノは抜群のボールコントロールから左足を振り、ネットを揺らした。トップ下を務めていた土居聖真もこの瞬間には2人のCBの間を割って入るように走り、相手の注意を引きつけていた。まさに練習してきた通りのコンビネーションで生んだゴールだった。

「練習で繰り返しやっている形。ハーフタイムに監督に背後を狙えと言われました。練習ではサイドハーフが斜めに走って、そこにパスを出すという形はやっているので。(ここまで無得点で)自分に変なプレッシャーがかかっていたので、ゴールできてよかったです」

 フラッシュインタビューで、練習通りの快心のゴールだったとファン・アラーノは振り返った。そして試合後には『攻撃の形』についての手ごたえを口にしている。

「自分がエヴェラウドにあげたクロスも、永戸(勝也)があげたものもフィニッシュまでつながりました。(チームの攻撃に)手ごたえは感じています。これからまた、その精度を磨いていきます。もっとゴールできるように、チーム全体で頑張っていきたい」

 そう言って胸を張った。チームの中で機能し、チームの狙いを体現して記録した1得点1アシスト。ファン・アラーノがこの日刻んだその数字を、さらなる活躍のサインとみるのは、ごくごく自然なことだろう。

取材◎佐藤 景


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