新型コロナウイルス感染のクラスターが発生したサガン鳥栖。8月11日から活動を休止していたが、26日にトップチームの練習が再開された。9月5日の第14節、横浜FC戦に向けて動き出したことを受けて、主将の小林祐三が思いを語った。

上写真=鳥栖はFC東京戦で今季初勝利。この笑顔をまた見せていく(写真◎Getty Images)

「フェアに戦っていける環境を」

「チームのキャプテンとしての立場でコメントさせていただくのなら、自分も責任を感じています」

 そう話し始めたのが、サガン鳥栖の小林祐三だ。

 選手28人、トップチームスタッフ15人、アカデミースタッフ28人、U-18選手33人、社員26人、関係者6人、選手スタッフ同居家族30人を対象にJリーグ臨時PCR検査を実施した結果、8月24日には166人全員の陰性が確認され、26日に練習を再開。選手28人とスタッフ15人が参加した、約1時間半のトレーニングを終えて、チームの現状や「withコロナ」における対応などを語った。

「現場の空気づくりについては、(キャプテンとして)もう少し働きかけができたのではないか、意識の差というところを現場レベルで言い合える環境を作れたらよかった、と思いました。ただ、新型コロナウイルスのような新たな病気に対しては、それぞれの人間としての考えに幅やばらつきが出るのは仕方がなくて、置かれた立場や考えによって病気のとらえ方が変わると思っています。でもそのままバラバラにしていいかというと、そうは思っていません。クラブを背負う責任感、公人としての責任感が集えば、考えにばらつきがあっても行動は一つになるのではないか。その点で、クラブとしての行動・規律は統一していければいいというのが個人の雑感です」

 小林の言葉にはさまざまな意味が込められていて、これは一クラブにとどまらず、社会的な規範にもなりそうだ。

 鳥栖としては今回のクラスター発生を受けて、小林の言葉を借りると「対策を徹底する」ことに注力したという。

「例えば(クラブが作った)行動改善のポイントが書かれた意識づけのポスターを目がつくところに貼ったりしました。特に、改めてマスクの着用については、年上の選手でもあっても着け忘れたら言い合おうという話が選手からも出ています。もう一度、気を引き締め直して二度と起こらないようにしていきたい」

「いちばん大事なのは選手、スタッフを含めた“言い合える”環境づくり。そこがキャプテンとしての一番の仕事かなと思います」

 練習再開を受けて、9月5日の第14節、ホームの横浜FC戦でリーグ戦にも復帰する予定だ。苦境を乗り越えていく姿を見せることは、逆に鳥栖の選手にしかできないことだろう。だからこそ、小林はピッチの上にフォーカスする。

「言葉を選ばないで言うと、コロナに感染したから負けていい、とか、勝たなければいけない、ということはありません。選手それぞれが自分の体を通じて思いをピッチで表現することが必要です。クラスターを起こしてしまったから勝たなきゃ、も、エクスキューズが許される、も、どちらもないんです。もちろん、私たちは言い訳をするつもりもありませんし、改めて申し訳なかったと伝えたい。ただ、次の試合に向かっていくためにはそういうものをおろして、フェアに戦っていける環境をつくっていきたいんです。選手はピッチの中でやるだけだ、という状況を作りたいと思っています」

 そして、小林ならではの考えがこれからの鳥栖とサッカー界に大きな影響を与えるかもしれない。

「例えば、あと1カ月すべて我慢すれば収まる、ということであればできると思うんです。でも、この状況と長く向き合っていく時間軸の長さが一番難しい。一個人として言うと、いろいろなトレードオフ(ある一つを尊重すると、もう一方が成立しなくなる)が存在し始めていると感じています。コロナと向き合うのが人生のすべてなのか、個人的にそこを乗り越えられた選手が活躍すると思いますし、苦しむ選手は圧倒的に苦しむと思います。その落としどころを見つけながら、個人として消化しながら、チームとしては(消化しきれない選手を)サポートしながら進んでいければと思います」


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