絶好調の川崎フロンターレでピッチに立ち続けているのが、脇坂泰斗だ。中盤で攻守にわたって重要な役割を担うが、下手なペース配分はこの人には必要ない。常に100%でピッチに飛び出すパワーがチームを支えている。

上写真=脇坂の思い切りが今季のチームの魅力になっている(写真◎Getty Images)

「飛ばしていくことが結果にもつながっています」

 止まらない川崎フロンターレの、一つの象徴的な存在だろう。脇坂泰斗はほとんどフル出場していない。

 調子が悪い、わけではない。「スタートから出してもらっていて、求められているのは前半で勝負を決めるところです」。早いうちから得点を重ねて、余裕を持ってコントロール下に置いた状態でゲームを進めていく。それが今年の川崎Fの強さの秘密だが、そのためには、前半のラッシュが必要なのだ。だから、脇坂は走って走って走る。

「変わって入ってくる選手が良い状況でプレーできるように、前半から飛ばしていきます。そこは、連勝できているので結果に表れているのではないでしょうか」「交代枠が5つあって、うちのチームは前(攻撃陣)で使いたいので、スタートから最後まで全部出るとは思わずに飛ばしていくことが結果にもつながっています」とチームとしての戦いに胸を張る。

 もちろん、フル出場する準備は怠らない。「横浜FC戦は90分出たんですけど、やっぱりきついと思いました(笑)。でも、日頃から全部出る準備はしていますし、出る時間は100%出し切るだけです」。リーグ戦の出場は1年目はゼロ、2年目は18。「自分はまだ経験が浅い」という思いがある。だからいま、レギュラーとして出場していることに甘んじるつもりはない。

「よく言えば、自分たちが思っているのは失点しなければ勝てるということです。実際にチャンスを多く作れているので、その意味でもまず守備、というところで割かれる時間が長いですが、攻撃でパワーを使えるように工夫したいし、得点に関われればもっといいと思うんです」

 攻撃サッカーの権化のように見られるチームにあって、「守備第一主義」は少し意外にも思える。だが、奪ってしまえばこっちのもの、とばかりにゴールに向かっていく自信があるだけに、攻守の切り替えのタイミングで襲いかかるディフェンスが相手を苦しめている。

 その作業をハードにこなしているからこそ、ほしくてたまらないのがゴールだ。攻撃への比重を高めていくためにも、「スタートから100パーセント」の思想が生きてくる。

 あとは、セットプレーからのゴールを導きたいという。「去年はあまりセットプレーから取れなかったので、キッカーとして責任を感じています。相手に応じて変えていますし、ウイークポイントを見つけて練習して、あとは練習通り蹴ることを心がけています」

 自身のゴールは今季はまだ1つ。横浜FC戦で決めた28分の先制ゴールだった。しっかりゴール前に詰めていて、レアンドロ・ダミアンのヘディングシュートがバーに当たったところを丁寧に右足インサイドで送り込んだ。

 そんなシーンを、何度も見たい。


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