湘南ベルマーレにまた楽しみなスピードスターが登場した。市立船橋高から加入したルーキーの畑大雅がJリーグYBCルヴァンカップグループステージ第2節の柏レイソル戦でプロ初先発。伸びやかな縦突破を披露してみせた。

上写真=プロ初先発の畑。柏を相手に堂々と渡り合った(写真◎J.LEAGUE)

■2020年8月5日 YBCルヴァンカップDグループ第2節(@三協F柏:観衆1,949人)
柏 1-0 湘南
得点:(柏)呉屋大翔

「一からやり直したい」

 ルーキーのプロ初先発。そう聞いただけで、少しの緊張と初々しさとはにかむ様子を勝手に想像してしまいがちだが、湘南ベルマーレの右のワイドアタッカー、畑大雅は少し違った。試合後の会見で笑みらしきものがその表情に見当たらないのだ。

「プロの世界なので結果には本当にこだわってやろうという意気込みで入りました。でも、前半は鹿島戦のように体が動かなくて、あまり良くない立ち上がりで前半やってしまって…」

 リーグ6節の鹿島アントラーズ戦で85分から途中交代してデビューは済ませているから、緊張もなかったのかと思えば、「(うまく入れなかったのは)大部分は緊張ですが、言い訳にはならないです。修正していきたい」と唇を噛むのだった。

 魅力は伸びやかでスピード感満載の突破力だ。これを武器に、U-17日本代表の一員として2019年のU-17ワールドカップにも出場している。柏レイソルが相手のこの日は、対面にサイドハーフの瀬川祐輔とサイドバックの高橋峻希が二段構えで立ちはだかっていた。ここを突破するのが大きなミッションだった。

「後半のワンプレーをきっかけに気持ちが楽になりました。そこからのびのびやれて良さが出たと思います」と振り返ったのは、56分のシーンのこと。右サイドを縦に突破して柏のファン・サポーターを驚かせ、鋭くセンタリング。ボールは中の選手が追いつけないほどのスピードでゴール前を横切っていったが、緊張もひとまずこれで解けたようだった。

 そのまま、「プロ初先発」に加えて「プロ初フル出場」まで達成したのは収穫だった。とはいえ、試合は0-1で敗戦。次から次へと反省が口を突く。

「押し込めたかもしれませんけれど、クロスを上げきれずに相手に当ててしまったし、何度も突破したかと言えばそんな感じは自分ではないんです。あと一歩というところでした」としたのは、攻撃面の物足りなさ。守備についても、「僕のところを中心に攻められて短いパスで裏を取られました。相手の左サイドバックの選手が右利きというのもあって、中に行かせないようにという指示だったのですが、修正できなくてやられてしまいました。受け身にならず自分でもっと考えてやれれば、ああいう時間を減らせたのではないかと思います」と、序盤の好リズムをひっくり返されたきっかけになってしまったことを悔やんだ。

「今後につなげていかなければいけないですし、これからは特徴が分かってしまった中でプレーするので、その想定はしていかなければいけない。一からやり直したい」

 どこまでも唇を結んで真剣に振り返る姿は、プロ初先発に浮足立つような若者のそれではない。このにじみ出るような悔しさによってきっとさらにそのスピードが高められ、湘南の新しい魅力になることだろう。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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