惜別の90分で、最高のフィナーレだ。FC東京は7月18日のJ1第5節で相性の悪い浦和レッズと対戦。ロシアのFCロストフに移籍するために最後のゲームとなった橋本拳人にとって、どうしても勝ちたい相手に勝って、旅立つ。

上写真=橋本はセレモニーで青と赤の花束をもらってファン・サポーターにあいさつ(写真◎J.LEAGUE)

■2020年7月18日 J1リーグ第5節(@味スタ:観衆4,705人)
FC東京 2-0 浦和
得点:(東)ディエゴ・オリヴェイラ、アダイウトン

「相手の嫌がることができた」

 浦和レッズは苦手だった。意識はしなくても、2013年9月14日、J1第25節で3-2で勝って以来、12試合も勝っていなかった。ロシアのFCロストフに移籍するためにこのゲームが最後となった橋本拳人にとっては、ラストチャンスだった。

「こういうタイミングというのもありますけど、ずっと勝ちたかった相手。僕の中で必ず倒さなければいけない相手だったので、最高の試合ができてよかったです」

 最後に勝った2013年のその試合に橋本は出場していなかったから、これが初めての勝利だ。「最初で最後」の浦和戦白星になるかもしれない。

「自分自身、ラストマッチでしたが、レッズに一度も勝ててなくて、なんとか勝ちたかったので、うれしい思いです」

 チームの充実がこの「初勝利」につながったようで、「前節、いい形で勝てて(横浜F・マリノスに3-1)、その流れのまま試合に入れたのが大きかった。浦和の対策もしっかりできていたし、共通意識を持ってできた」と右肩上がりの流れを感じている。橋本本人は激しく相手にチャージしてボールを奪い取るのが自慢だから、「相手の嫌がることができた」という分析も、いかにもこの人らしいものだった。

 今季採用した、橋本をアンカーに据える4-3-3は、まさに「拳人仕様」とも言えるのフォーメーション。この新布陣で臨んだゲームは、前半終了間際に先制したことで、後半は浦和がかさにかかって攻めてきた。そのパワーをうまく吸収しながらミスを見逃さずに追加点を挙げ、時間をうまく使いながら相手をじりじりと追い込み、最後まで主導権を握るゲームコントロールは、確かに浦和の嫌がるテンポだった。

 そして、82分に東慶悟が交代でピッチを去るときにはその左腕にキャプテンマークを引き継いで、青赤魂をもう一度注入されたのだった。

「久しぶりにファン・サポーターの皆さんに会えて、その前でプレーできて幸せだなと感じましたし、一緒に勝利を分かち合えてすごくうれしい気持ちでした。選手とは最後、たくさん話しをしたり写真を撮ったり、頑張ってこい、とか、戻ってくるなよと言われたりして、いろいろな思い出がありますから、寂しい気持ちになりましたけど、僕自身もこの先、活躍することで恩返しできると思うので、これからもFC東京を応援していますし、僕自身も頑張っていきたいと思います」

 次なる挑戦の場はロシア。

「自分の強みであるボール奪取のところ、守備的なプレーが通用するかどうか楽しみだし、攻撃でもどうチャンスに絡むのか、結果が必要なので、攻守両面で存在感を出したいと思っています」

 さあ、新しい勝負だ。

現地取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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