新型コロナウイルスの影響で中断が続いているJリーグで、各クラブは再開に向けて準備を進めている。湘南ベルマーレのGK富居大樹は、この我慢の日々が良いリスタートにつながると、自信を口にした。

上写真=3月19日の練習。湘南の守護神・富居は集中してトレーニングに励んでいた(写真◎杉山孝)

再開を見据えて…練習は嘘ををつかない

 チーム全体のトレーニングが始まる20分以上も前から、4人のGK陣はグラウンドでコーチとともにメニューをこなしていた。そして全体練習が終わった後、最後に引き上げてくる一団にいたのが富居だった。

「湘南のキーパーは皆が同じ温度でやれています。厳しいトレーニングが多いし、皆で声を出しながら、良い雰囲気で練習できていますね」。一番長くグラウンドにいるのが納得できるような言葉だった。

 今シーズンのスタートは、富居にとって格別の『味』がした。プロ入りから6年目、初めてJ1で開幕スタメンを飾ったのだ。

 一足早く始まったルヴァンカップの大分トリニータ戦では、苦しみながらも1点差での完封勝利を手にした。続けてゴールマウスを預かった5日後のリーグ初戦は、浦和レッズ相手に五分に渡り合う内容を示したが、2-3で落とした。味わいは複雑で、だからこそ、次への意欲につながる刺激にもなった。

 大卒ルーキーとしてザスパクサツ群馬の一員となった2013年は、メンバー外から始まったものの、ベンチにまでたどり着いた。翌シーズンの途中にプロデビューを果たすと、2015年は定位置を確保。だが、モンテディオ山形に移ったその後の2年間は定位置をつかめず、その流れは湘南に加わってからも続いた。

 潮目が変わったのが、昨季終盤だ。残留争いがけっぷちのチームで、リーグラスト4試合で抜擢されると、その4戦を計2失点の1勝2分け1敗で乗り切る。プレーオフでも引き分けて、J1残留を果たした。

 あの苦しかった日々を今、振り返る。

「キーパーというのはいつ出るかわからない。途中交代もまずありませんが、いつアクシデントがあって試合に出るかもわからない。それでも、試合に出るという気持ちに持っていってくれていたというのもありますが、試合に出るんだという気持ちで練習をやれていました。納得できるプレーだったと言うのは難しいんですけど、残留という使命を果たせたという思いはあります」

 だからこそ、自信を持って言える。

「やっぱり練習は嘘をつかないな、と思いましたね。しっかりトレーニングからやっていないと、試合ではできないと思うので」

 昨年の、いや、GKとして汗を流して続けてきた日々の延長に、初のJ1開幕スタメンがあった。そして、未来が切り開かれていく。

「J1での開幕戦というのは、自分の中で特別なものでもありましたし、だからこそ勝ちたかった。そこで出た課題をすごく考えているし、次の試合で修正しないといけないと思っていました。その矢先の中断でしたが、課題に取り組める時期だと、少しでもポジティブにとらえてトレーニングしています」

 忍耐強いGKは、中断期間にもブレはしない。

取材◎杉山 孝


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