現在、Jリーグは開幕戦を終えて中断中だが、この連載では再開後のリーグ戦でさらなる活躍が期待される各クラブの注目選手を紹介していく。連載第12回は、横浜FCの大卒新人、MF瀬古樹を取り上げる。

上写真=ピッチ上で堂々とした振る舞いを見せる瀬古(写真◎J.LEAGUE)

文◎北條 聡

卓越した情報収集力

 もう何年も前から主力の一角としてプレーしてきたんじゃなかろうか――と、錯覚してしまう。それくらいの見事な収まり具合だった。

 横浜FCの大卒新人、瀬古樹だ。

 ルヴァンカップ初戦でいきなり先発に抜擢され、堂々のプロデビュー。J1開幕戦でもフル出場を果たしたうえに、プロ初ゴールまで決めてみせた。本業は点取り屋――じゃなく、中盤で攻守のバランスを司るボランチなのだから恐れ入る。

 情報を速く的確に処理する手際と、迷わず踏み出す行動力が素晴らしい。だから、先制ゴールの場面でも目の前におあつらえ向きのボールが転がってくるのだろう。敵地で強豪のヴィッセル神戸を相手に長く防戦に回りながらも、前に出ていく力を失わない。あの1点は自身を売り込む格好のプロモーションになったんじゃなかろうか。

 当然、持ち前の行動力は中盤の狩り場でも生かされていた。縦ズレ、横ズレが速く、守る範囲も広い。しかも相手がアンドレス・イニエスタだろうが、酒井高徳だろうが、果敢に仕留めに行く。敬意は払いつつも、遠慮のないファイトを仕掛けるのだから、やはり並の新人ではない。

 狩りに必須の間合い、位置取りが取れているからだ。それも情報収集力の賜物だろう。秘密はあのめまぐるしい「首振り」か。絶えず四方八方に目を配り、己の立つべき場所を割り出していく。ボールに釣られて、しばしば「迷子」になる呑気なボランチとは違うわけだ。

 相方の手塚康平と密に言葉を交わし、微調整も怠らない。それがなければ、神戸の破壊的な攻撃力を前に1失点で抑えられたかどうか。とりわけ瀬古が監視に回った神戸の左サイドはイニエスタと酒井の2人に古橋亨梧が絡む「魔の三角地帯」だ。行方不明者続出という鬼門中の鬼門である。瀬古も何度か魔境に吸い込まれたが、懸命に食らいつき、最悪の事態を回避している。


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