令和最初の天皇杯王者の称号はヴィッセル神戸が手にした。監督交代や多くの選手が入れ替わる激動の1年の最後にクラブ史上初めてタイトルを獲得した。イニエスタやポドルスキはチームの成長をどう感じているのか。

上写真=天皇杯を掲げ、優勝を喜ぶヴィッセル神戸の選手たち(写真◎福地和男)

■2020年1月1日 第99回天皇杯決勝 @東京・国立競技場
 神戸 2-0 鹿島
 得点:(神)OG、藤本憲明

今日からが始まり(ポドルスキ)

 大一番に先発を果たし、88分間プレーしてベンチに下がっていたアンドレス・イニエスタは、優勝が決まった瞬間、仲間と、そしてスタッフと抱き合って喜びを表現した。FIFAワールドカップやEURO、リーガエスパニョーラ、UEFAチャンピオンズリーグ…そのキャリアの中で数々のビッグタイトルを手にしてきたプレーヤーにとっても、今回の天皇杯優勝は格別だったという。

「とてもうれしい。今日は特別な日です。個人としても、クラブとしても特別な日。1年間、タイトルを取るために頑張ってきたので、本当にうれしい。クラブにとっても神戸の街の人にとっても、特別な日にできたことを、とてもうれしく思います」

 神戸の地で冒険に踏み出して2年、ようやくつかんだタイトルだった。シーズン序盤はチームが迷走、監督が交代し、成績も低迷。しかし、シーズン終盤に調子を上げ、ようやくスタイルも定まってきた。間でパスを受けてつなぐ――。共通理解が深まり、チームの歯車がかみ合い始めた。そしてつかんだ、初タイトル。大きな喜びを感じるのも当然だろう。

「確かにチームが成長したということが優勝の重要なキーだと思います。この優勝は、一つの分岐点になる。来シーズンに向けては、まずはJリーグで強いチームでいるということが一番大事だと考えます。Jリーグでいい活躍ができれば、そのほかのカップ戦、ACLでも結果が伴ってくる。そういう意味では、今は喜んではいますが、しっかりと休んで、リフレッシュして、新たなモチベーションでまた取り組んでいければ、と思っています」

 今回の天皇杯優勝がチームの成長を象徴しているという考えは、ポドルスキも同じだった。

「最後の5試合は、自分たちのサッカーができた。今まで自分たちのサッカーだったり、神戸としてどんなスタイルを求めていくのか、何が自分たちが合うのかというのが、以前はしっかりと定まっていなかった。でも徐々に自分たちの形というのが見えてきて、選手の入れ替わりはあったが、誰が出ても自分たちのサッカーができるようになった。それがチームとして成長したところ」

 今シーズンはケガに泣かされ、自身は期待された活躍ができなかったが、成長したチームのこれからが楽しみだとポドルスキは話した。

「自分にとってもクラブにとっても素晴らしいタイトルになった。クラブ史上初のタイトルで、素晴らしい雰囲気の中で、新しいスタジアムで、新しいスタートを切れたんじゃないかなと思う」

 シーズン終盤、神戸が誇る『強力な個』が、枠組みの中でしっかり輝くようになった。これまでどこかバラバラだったタレントが一つにまとまり、チームとして機能するようになったという言い方もできるかもしれない。

 イニエスタも、ポドルスキも確かな手ごたえたを感じたという天皇杯優勝。取材エリアでポドルスキは最後にこう言った。

「今日で終わりではないし、今日からが始まり。自分たちのサッカーで、これから先に進んでいく」

 選手たち自身が、これからの神戸に期待している。

取材◎佐藤景 写真◎福地和男、山口高明

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