今大会で次々とJクラブを撃破してきたJFLのHonda FCに、鹿島も苦戦を強いられる。前半はシュート1本に終わるなど、試合の主導権を握られる。後半もHonda FCに鋭い攻撃を仕掛けられ、何度もピンチを招いてしまう。それでも、失点を防ぐと、65分にMF遠藤康のクロスからFW土居聖真がヘディングシュートを決めて先制。このゴールを最後まで守り切り、長崎との準決勝に駒を進めた。

上写真=プロ入り後、カシマスタジアムでの初めての試合に臨んだ有馬(写真◎Getty Images)

■2019年10月23日 天皇杯準々決勝
鹿島 1-0 Honda FC
得点者:(鹿)土居聖真

「もっと積極的にプレーすればよかった」

 鹿島ユース出身のプロ1年目、FW有馬幸太郎がトップチームでの初先発を飾った。ユースの大先輩であるFW土居聖真と2トップを組み、試合終了のホイッスルが鳴るまで、ピッチに立ち続けた。

 プロ初スタメンの舞台となったカシマスタジアムは、小学1年生から鹿島のアカデミーでプレーしてきた有馬にとって、慣れ親しんだ“ホーム”とも呼べる場所。特にユース時代は、高円宮杯プレミアリーグEASTの試合などでも多くプレーした。ただ、プロの試合は当然ながら、勝手が違っていたようだ。

「最初は結構、緊張しましたよ。当然、ファン・サポーターの皆さんによる応援の雰囲気だったり、ユースの時とは緊張感が全く違いましたね」

 天皇杯では、デビュー戦となった3回戦の栃木戦(○4-0)でプロ初ゴールを挙げているが、この日はわずかシュート1本にとどまった。「チャンスを増やす動きだったり、その1本のチャンスを決めるために、練習からもっと意識を高めていきたい」と、試合後は反省しきり。「もっと積極的にプレーすればよかった。緊張から『ミスをしないように』とプレーするところもあったので」と、自身の消極的なプレーを悔やむ。

「どうしても点を取りたかった。結果を残して次につなげたい思いが強かったので、悔しいです。結果もそうですし、特に(ボール)キープをもっとできないと、試合に出るのは難しくなると思うので、そこも課題ですね……」

 有馬自身にとって、ほろ苦い試合となった本拠地デビュー戦。しかし、下を向いてばかりはいられない。MFセルジーニョら、主力に数多くのケガ人を抱える鹿島において、次の出番はすぐに訪れるかもしれない。

「(カシマスタジアムの)ピッチに立てたこと自体が自分の中では大きいことだし、この緊張感の中でプレーできたことは、これからにつながると思います。なかなかこういうチャンスはないので、物にしたかったけれど、次こそは逃さないように、練習でアピールし続けていきたいです」

 常勝軍団のDNAを継ぐアタッカーは、さらなる飛躍を目指す。鹿島ユースの先輩ストライカーから受け継いだ「34番」を背負い、ゴールに向かい続ける。

「鈴木優磨選手(現シントトロイデン=ベルギー)は存在感や、得点を取るオーラがすごい。自分にもそういったものが欲しい。『(有馬が)ゴールを決めてくれる』と、周囲から期待される選手になりたい」(鹿島ユース所属時)

 高校時代に胸に秘めた思いをプロのピッチで体現するため、有馬はこれからもトレーニングから自身のスキルを磨いていく。

取材◎小林康幸

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