11月20日の最終節で、JFL(日本フットボールリーグ)に入会して4年目のシーズンを終えたFC神楽しまね。夏以降に選手・スタッフへの給与未払いが続き、経営危機を抱えたままオフに突入した。加入2年目のFW遊馬将也(ゆうま・まさや)も苦悩の時期を過ごし、将来への葛藤を抱えている。

上写真=11月20日の最終節は交代出場だった遊馬。クロスバー直撃の惜しいシュートもあったが無得点に終わった(写真◎石倉利英)

支払いの遅れから、状況はさらに悪化

 武南高(埼玉)、東洋大を経て2016年に当時J3のブラウブリッツ秋田に加入した遊馬は、1年目はリーグ戦20試合に出場して3得点。2年目の17年は24試合に出場、ガイナーレ鳥取との最終節でダメ押しの3点目を決めるなど3得点を挙げ、リーグ優勝の喜びに浸った(このときはJ2ライセンスが交付されていなかったため、昇格はできず)。

 19年にJFLの奈良クラブに移籍し、21年に同じくJFLの松江シティFC(当時)に加入。30試合に出場して6得点を挙げ、前年の10位から、過去最高成績となる5位への浮上に貢献した。今年、松江シティFCはチーム名をFC神楽しまねに変更。JFLでは序盤から出遅れて下位に沈み、残留争いを強いられていた。

 そんな中、6月に異変が。選手・スタッフは年俸を月割りにして毎月25日に支払われることになっているが、数日前に突如、クラブを運営する松江シティFC株式会社の宮滝譲治代表取締役社長が練習場を訪れた。

「6月分の給与の支払いが遅れる、と言われたんです。月末になるような話だったのですが、いきなり言われても、と選手側から伝えて、25日に50パーセント、月末に50パーセントが支払われました」

 神楽しまねは19年のJFL昇格以降、全国リーグ参戦による遠征費の増加や、コロナ禍の影響などで苦しい経営を強いられていた。6月は満額となったものの、遊馬が「もしかしたら、と思っていた」という7月、事態はさらに悪化する。宮滝社長が再び練習場を訪れ、7月分の給与は支払えないと選手・スタッフに告げた。

「ちょっと待ってくれ、という感じです。結局は8月上旬に、7月分の40パーセントが支払われました」

 7月31日の第18節を最後に、JFLは中断期間に入っていた。前半戦の第15節終了時点で最下位の神楽しまねにとっては、立て直しを図らなければいけない大事な時期。実信憲明監督やスタッフは、選手が同じ方向を向いてプレーすることの重要性などを説き、懸命にチームをまとめた。

 実信監督からは「サッカーができることに感謝して取り組んでいこう、という話もあった」という。遊馬も同じ思いだったが、とはいえ給与が支払われなければ、サッカー以前に生活することができない。4月に結婚したばかりでもあり、無給のままサッカーをしているわけにはいかなかった。

 クラブとはプロ契約を結んでいるものの、給与未払いなどの事態が起こった場合はアルバイトも可能との条項があり、宮滝社長の了解を得て8月からアルバイトを始めた。クラブをサポートしている洋菓子店の求人を見つけて応募し、火曜、水曜、金曜の週3回勤務。午前中の練習が終わった後、19時や20時まで働く日々が始まった。

 アルバイトをしながらプレーするのは、秋田加入1年目の2016年以来。「言い訳はしたくないのですが、ここ数年のサッカーに集中できていた環境から大きく変わり、ストレスが溜まりました。疲労も感じています」という状態が続いた。


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