かつてJリーグで名うてのFWたちと対峙してきたCB出身の上本大海スカウトが惚れ込み、先物買いした逸材がいる。大分トリニータにとっては異例となる2月に内定発表。2022年度から加入する宮崎産業経営大のFW宇津元伸弥とはーー。

上写真=スカウトもほれ込むスプリント力を持つ宇津元伸弥(写真提供◎関東大学サッカー連盟/飯嶋玲子)

どうしても来てほしいという熱を感じました

 各地域の選抜チームで争われた3月のデンソーカップで、J1内定組の一人として注目されていたのが九州選抜の宇津元伸弥だ。九州大学リーグで2年連続得点王に輝き、2月26日には大分トリニータから内定が発表されたばかり。デンソーカップの視察に訪れていた関東在住スカウトは、感嘆していた。

「これまであまり見る機会がなかったけど、大分はいい選手を取りましたね。スピードがあってガンガン走れるし、ガッツまである」
 カウンターアタックから一気に前へ出ていく迫力は本物。本人もスピードには絶対の自信を持つ。天性の資質だけではない。宮崎産業経営大に入学後、意識して鍛えてきたのだ。動画サイトで走力アップのトレーニングをチェックし、足が速くなる走り方を徹底的に研究したという。

「100メートル走を例に上げると、僕は後半にスピードが伸びてくるタイプでした。ただサッカーに必要なのは瞬発力。だから、大学では初速を上げるためのトレーニングを積んできました。いまは感覚が変わるくらいスピードアップしたと思います。ボールが出たときの一歩が違うので。僕の長所はスピード。これからも追求していきたいです。もっと速くなれると思っています」

 デンソーカップでも持ち味を生かし、一人でボールをぐんぐんと運び、瞬く間に敵陣深くまで持ち込んでいた。スタンドからじっとピッチを眺めていた大分の上本大海スカウトが、高く評価する縦への推進力である。

「スプリント力は魅力です。おまけにスタミナもあり、何回でも飛び出していけます。そして、守備のアプローチも速い。大分のサッカーに合うと思います。徐々にパワーもついてきます。技術的にはまだ足りない部分はあるけど、逆にそこは伸びしろ。宇津元には可能性しか感じないですね」

 上本スカウトの言葉には自然と力がこもる。その熱意は、選手本人にも伝わったようだ。宇津元は他クラブからも興味を示されていたが、昨年12月下旬に大分からオファーを受けると、日を少し置いてから気持ちよく返事を返した。

「どうしても来てほしいという熱をすごく感じたんです。スカウトの上本大海さんは2年生のときからリーグ戦を毎試合、見に来てくれていました。オファーを出してくれた後も、毎日電話をくれて。その熱意に心を動かされ、トリニータにすぐ決めました」

 オファーの連絡を受けた日は忘れもしない。何かしらの運命を感じずにはいられなかった。

「お世話になっていたひいおばあちゃんの葬儀があった夜にちょうど電話をもらったんです。親戚もみんな集まっていて、そのことを報告しました。天国のひいばあちゃんが最後にプレゼントをくれたのもかもしれないって」

 プロのスタートラインに立つのは約1年後。4月からは最終学年となり、大学サッカーのラストイヤーに臨む。宮崎産業経営大のエースとして、1試合1点は最低目標。九州大学リーグの3年連続得点王も視野に入れ、天皇杯、総理大臣杯、インカレの全国大会出場を目指す。プロを見据えて、個人として得点能力を向上させるための勉強も欠かさない。幼い頃からお手本にしてきたのは、同じ宮崎育ちで鵬翔高のOBでもある興梠慎三(現浦和レッズ)だ。デンソーカップの大会中も、試合前には必ずプレー集をチェックし、イメージを膨らませていた。

「クロスの入り方、裏へ飛び出すタイミング、動き出し、前線でのボールの収め方、そのすべてが参考になります。興梠慎三さんはフォワードに必要な能力を全部備えているので」

 Jリーグの舞台で憧れのヒーローと対面する日のために、きょうもストライカーにとって必要な技を磨いている。

取材◎杉園昌之 写真◎関東大学サッカー連盟/飯嶋玲子


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