歴史を学ぶ『日本サッカー温故知新』の第15回。この連載では日本サッカーが大きく発展した『平成の30年間』を写真と記録で振り返る。平成15年(2003年度)はリーグ戦が白熱。J1は横浜F・マリノス、J2はアルビレックス新潟が最終節で優勝を決めた。

上写真=横浜F・マリノスが8年ぶり2度目の優勝を果たした(写真◎J.LEAGUE)

新しい王者が生まれたシーズン

 この年は各コンペティションで初優勝チームが生まれた。Jリーグカップ(ナビスコカップ)では、浦和レッズが鹿島アントラーズに前年決勝のリベンジを果たして、初戴冠。Lリーグでは田崎が、昇格9年目でついに女王となった。J2では新潟が優勝で昇格に花を添えた。そして鹿島とともにJリーグ2強時代を築いていたジュビロ磐田が天皇杯を掲げたのも、このシーズンが初めてだった。

 J1リーグでは磐田が前年に初めて両ステージを制し、「完全優勝」を果たしていたが、早くも新しい「完全王者」が現れる。フランス・ワールドカップで日本代表を指揮した岡田武史監督率いる横浜F・マリノスだ。しかもその戴冠は奇跡的だった。

 延長戦が廃止されたこの年、2ndステージ最終節を3位で迎えた横浜FMはホーム日産スタジアムで首位の磐田との直接対決に臨んだ。仮にこの試合に勝利しても、さいたまスタジアムで浦和と戦う2位の鹿島が勝てば、横浜FMに優勝のチャンスはなかった。

 まずは勝利し、その上では他会場の結果に優勝の行方が左右される状況の中、横浜FMは試合開始早々に絶体絶命のピンチを迎える。磐田のグラウに先制を許し、その直後にGK榎本哲也が一発レッドで退場。一人少ない状態で戦うことになった。

 ところが、後半、劣勢にあったチームが攻勢に転じる。マルキーニョが同点弾を決め、残り10分を切ったところで久保竜彦がゴールを決める。横浜FMは逆境を跳ね返して逆転に成功。そのまま試合を終えて勝利すると、他会場で戦っていた鹿島が試合終了間際に追いつかれて浦和と引き分けた。

 最後に笑ったのは、修羅場をくぐり抜けてきた指揮官の教えを体現した選手たちだった。7年もの間、リーグタイトルを独占した鹿島、磐田の2強時代に終止符を打つかのようなタイトル獲得劇だった。

■平成15年度の主な出来事(2003年シーズン)

・1月7日 ミスターレッズ・福田正博が引退会見を開く
・1月24日 戸田和幸がトットナム(イングランド)へ移籍
・1月28日 北澤豪が現役引退
・2月22日 第1回A3・MAZDAチャンピオンズ杯で鹿島が初代王者に輝く
・3月1日 ゼロックス杯は磐田が優勝
・3月9日 AFCアジアチャンピオンズリーグ(ACL)準決勝、鹿島と清水はそろって敗退
・3月21日 Jリーグ開幕
・4月5日 髙萩洋次郎(広島)がJ1最年少出場記録(16歳8カ月3日※当時)を更新
・5月15日 急性呼吸器感染症(SARS)の影響を恐れ、第1回アジア選手権の開催が12月に延期される
・6月22日 フランスで開催されたコンフェデレーションズ杯で、日本はグループステージ敗退
・7月14日 柳沢敦がサンプドリア(イタリア)へ移籍
・8月2日 横浜FMがJ1・1stステージ優勝
・8月4日 インターハイは国見高が3年ぶり4度目の優勝
・8月9日 オールスター開催。エムボマがMVP、カズが最年長得点記録を更新
・9月29日 日本サッカー協会の本拠地が文京区へ移転。「JFAハウス」を開設する
・10月13日 高円宮杯(U-18)は市立船橋高が初優勝
・11月3日 ナビスコ杯は浦和が初優勝
・11月23日 新潟が大宮を下してJ1初昇格。この試合の観衆4万2223人はJ2最多入場者数
・11月23日 大学選手権は筑波大が連覇
・11月29日 J1最終節で横浜FMが磐田に劇的勝利。横浜FMが両ステージを制し、年間王者となる
・12月10日 第1回東アジア選手権で日本は2位に終わる
・12月12日 ワールドユース(UAE大会)で日本がベスト8。坂田大輔が得点王を獲得する
・12月13日 神戸が民事再生法を適用し、経営権の譲渡を発表
・12月21日 田崎がLリーグ初優勝
・04年1月1日 天皇杯は磐田が初優勝(第83回・03年度)
・04年1月12日 高校選手権は国見高が2年ぶり戦後最多タイの6度目の優勝(第82回・03年度)
・04年1月25日 全日本女子選手権で田崎が2連覇(第25回・03年度)

画像: 2ndステージ最終節、久保竜彦の劇的なゴールで横浜FMが磐田を下し、優勝を引き寄せた(写真◎J.LEAGUE)

2ndステージ最終節、久保竜彦の劇的なゴールで横浜FMが磐田を下し、優勝を引き寄せた(写真◎J.LEAGUE)

画像: 前年の磐田に続き、横浜FMは両ステージ制覇を成し遂げた(写真◎J.LEAGUE)

前年の磐田に続き、横浜FMは両ステージ制覇を成し遂げた(写真◎J.LEAGUE)

画像: 鹿島を4-0で下してJリーグカップ初優勝を果たした浦和。前年の雪辱を晴らし、クラブ初タイトルを手にした(写真◎J.LEAGUE)

鹿島を4-0で下してJリーグカップ初優勝を果たした浦和。前年の雪辱を晴らし、クラブ初タイトルを手にした(写真◎J.LEAGUE)

画像: JリーグカップのMVPとニューヒーロー賞をダブル受賞した浦和の田中達也(写真◎J.LEAGUE)

JリーグカップのMVPとニューヒーロー賞をダブル受賞した浦和の田中達也(写真◎J.LEAGUE)

画像: グラウの得点で均衡を破った磐田がセレッソ大阪を破り、天皇杯に優勝(写真◎サッカーマガジン)

グラウの得点で均衡を破った磐田がセレッソ大阪を破り、天皇杯に優勝(写真◎サッカーマガジン)

画像: リーグを3度、Jリーグ杯を1度手にしていた磐田だが、この年初めて天皇杯を掲げた(写真◎サッカーマガジン)

リーグを3度、Jリーグ杯を1度手にしていた磐田だが、この年初めて天皇杯を掲げた(写真◎サッカーマガジン)


This article is a sponsored article by
''.