昨年7月29日のブラジル戦(アメリカ遠征)に途中出場した経験はあったものの、なでしこジャパンとしてプレーしたのはその1回のみ。だが、土光真代の代表における2歩目は、極めて印象的なものとなった。11月10日の南アフリカ戦に先発し、フル出場。しかも、持ち味である正確なキックやラインコントロールで存在感を示した。

上写真=南アフリカ戦で先発フル出場を果たした土光

ビルドアップで見せた多彩なキック

 緊張がなかったわけではないだろうが、実に堂々たるプレーぶりだった。目を引いたのは、攻撃のスイッチを入れる積極的な縦パスと、左タッチライン際に位置取るサイドバックの遠藤純へのパス。とくに遠藤へのパスは抑えの利いた鋭いボールもあれば、鼻先へ届ける緩やかなボールもあり、状況に応じて蹴り分けていた。

「チームでもやっていることなので。蹴るボールの種類や(受け手の)どっち足に出すとか、速いボールなのか、浮き球なのか。(同じ日テレ・ベレーザの遠藤)純と左で組んだのは初めてなんですけど、そういうのは練習とか試合で合わせつつ、いつもやっていたので」

 初先発にしては状況を鑑みたキックや冷静な守備など、堂々たるプレーだったと指摘すると、事も無げに言った。

「もうちょっと配球の面ではやれたかなと思います。前半は相手が前に少しは(圧力を)かけてきましたけど、後半は自分たちがフリーで持てることが多かったので、フリーならもう一枚を引き出すようにドリブルで仕掛けて次の人に配球することができれば、前の選手が楽に崩せたり、チャンスメークできたのかなと思います。自分がフリーだからすぐに味方にパスというのではなくて、もう少しできたかなと思います」

 むしろ、本人は代表2キャップ目の内容にまったく満足してなかった。裏にあるのはもっとチームに貢献できるとの思いだろう。

 前半20分の先制点の場面。GKが弾いたところを頭で押し込んで熊谷紗希が代表初ゴールを決めたが、中島依美のCKに飛び込み、スライディングしながらシュートしたのが土光だった。

「やばい来ちゃったと。でもめっちゃ良いボールだったので、頑張って足を伸ばして。入ったらな良かったですけど、それが紗希さんの点につながったので良かったと思います」
 ビルドアップやセットプレーでの飛び込みなど、攻撃面で違いを見せた上で、守備でも安定したプレーを見せた。遠藤が上がったあとを突かれ、チームとして対応で後手に回るケースもあった中で、集中力を切らさず、無失点で試合を終えることに貢献した。

「何本か(相手の)FWにボールが入ってしまうシーンだったり、全部抑えられたかと言ったら全然そうではないので。もっとレベルの高いチームと対戦したら、そこで一発でやられてしまう。そういう一つ一つのプレーに責任をもって対応していかないなと思います」
 
 見ているのは、もっと高み。だから攻撃面も守備面も満足できない。課題ばかりが口をつく。高倉麻子監督が「守備に対する集中力は非常に高かったと思いますし、フィードのところでも工夫をしてプレーをしようというところはあったので、及第点かなと思います」と評価する内容だったとしてもだ。

「紗希さんと組んだのは今回の合宿が初めてでした。組む前から紗希さんのイメージとか聞いているところはあったので、やっぱりディフェンスリーダーとしても、球際のとこだったり、本当にすごいなと思っていました。ただ、そこで紗希さんに全部頼るのではなくて、ラインコントロールとか、ビルドアップの部分で、自分が発信していくところが必要だと思う。まだまだ課題はたくさんあるので、もっと突き詰めていきたい」

 今回の南アフリカ戦で土光が持ち味を示したことは、チームにとってプラスだ。高倉監督にとっても大きな収穫だったに違いない。しかも、本人は飽くなき向上心を備えている。

取材◎佐藤 景 

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