鳥取が首位の群馬を1-0で下し、J2昇格争いに踏みとどまる勝ち点3を挙げた。決勝点を挙げた石井は、これがJリーグ初ゴール。負傷明けの一戦で大きな仕事をやってのけ、大学の後輩の活躍に刺激を受けるシーズンの残り試合で、さらなる浮上を期している。

上写真=鮮やかなボレーシュートを決め、両手を広げて喜ぶ石井(写真◎J.LEAGUE)

■2019年10月20日 J3リーグ第27節
 鳥取 1-0 群馬
  得点者:(鳥)石井光輝

「枠に飛ばすことだけを考えていた」

 6月の第14節を最後に負けなしだった群馬に14試合ぶりの黒星をつける鳥取の決勝ゴールは、得点という点では意外な『伏兵』が決めた。35分、CKのこぼれ球をMF可児壮隆がダイレクトでエリア内に蹴り込むと、ファーサイドで石井がフリーに。浮き球を左足ボレーで合わせたボールが、群馬GK吉田舜の頭上を破ってネットを揺らした。

 ゴールシーンについて石井は「左足だったので、振り抜くよりはインサイドキックで、しっかり当てようという意識だった。入ってくれてよかったです」と振り返る。GKの頭の上を抜いたシュートのコースは、狙っていたというよりは「しっかり当てて、ゴールの枠に飛ばすことだけを考えていた」という。

 J初得点とあって、チームメイトが祝福に駆け寄ってくるのも初めて。これまでは駆け寄る側だったため、「不思議な感じだった」と笑顔。試合前、控えメンバーから「得点を決めたらベンチに走ってこい、と言われていた」そうだが、「そんなことも忘れてしまって、両手を広げていた」ところに、次々に仲間が駆け寄ってきて祝福の輪が広がった。

画像: 得点を決めた石井(2番)にチームメイトが駆け寄る。ベンチに戻ってこい、という試合前の約束も忘れる喜びのJ初得点だった(写真◎石倉利英)

得点を決めた石井(2番)にチームメイトが駆け寄る。ベンチに戻ってこい、という試合前の約束も忘れる喜びのJ初得点だった(写真◎石倉利英)

 この日の試合会場は、通常使用している鳥取市の『とりぎんバードスタジアム』ではなく、練習拠点にしている米子市のチュウブYAJINスタジアムで、3011人の観衆が詰めかけた。「チュスタでの試合に向けて、野口さん(功=クラブの芝生管理スタッフ)が芝生を管理してくれたり、こういう環境を作ってくれたスタッフの方々、サポーターの皆さんの思いもあった」と感謝し、「その中で、得点できて勝つことができたのはよかった」と語り、あらためて自身の得点の価値をかみ締めていた。

 静岡の常葉学園橘高から進んだ関西大では主将を務め、卒業後の2017年に鳥取に加入。ボランチやサイドバックでプレーできるマルチロールで、粘り強い守備対応などが持ち味だが、負傷の多さもあり、1年目はリーグ戦17試合、昨季は1試合の出場にとどまった。今季もシーズン途中から3バックの一角で先発に定着していたが、8月のリーグ中断期間中に左ヒザ内側側副靭帯損傷の重傷。戦列に戻って前節は控えに入り、先発で公式戦復帰を果たした今節でチームを勝利に導いた。

 そんな石井が刺激を受けているのが、J1広島のDF荒木隼人だ。関西大で石井の2学年下、同じく主将も務めた荒木はプロ1年目の今季、シーズン途中から広島の3バックの一角で先発に定着しており、「大学で2年間、一緒に試合に出ていた選手が、J1の舞台であれだけのプレーを見せて、得点も決めたりしている。トップレベルでやっていて、すごく刺激になります」という。9月のJリーグ育成マッチデーで鳥取と広島が対戦したとき、荒木は途中出場したが、石井は復帰途上でベンチ外。健闘を誓い合ってからほどなく、石井にとってはキャリアの重要な1ページとなる初ゴールが決まった。

 鳥取は群馬を首位から引きずり下ろしたものの、前節終了時点で2位だった北九州は勝ち、残り7試合で勝ち点差は10で変わらず。2位の藤枝とも勝ち点8差と、J2昇格に向けて、今後も多くの勝利が求められる状況は変わらない。「練習のピッチでやっていることがすべて。どれだけ全員で細かいところを突き詰められるかが大事になる」と語った石井は、「それを一人ひとりが意識しながら、団結して、残り試合はすべて勝つという気持ちでやっていきたい」と言葉に力を込めていた。

取材◎石倉利英 写真◎J.LEAGUE、石倉利英

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