これまで日本代表では主にCBを務めてきた冨安健洋は、この日、前半はそのCBとして、後半は所属するボローニャで担う右サイドバックとしてプレーし、マルチロールプレーヤーとしての能力を、改めて示して見せた。

上写真=前半と後半で異なる顔を見せた冨安健洋(写真◎福地和男)

■キリンチャレンジカップ2019
 日本 2-0 パラグアイ
 得点=(日)大迫勇也、南野拓実

成長につながると思います(冨安)

 森保一監督は、そもそも守備の万能選手として冨安を位置付けている。ケガ人が続出した今年1月のアジアカップではCBとボランチでプレーさせた。そしてこの日は前半はCB、後半からは右サイドバックで起用した。その意図を指揮官はこう説明した。

「交代枠が6人ある中で、交代枠をできるだけ使って今日の試合に勝利することと、このパラグアイとの試合を次のミャンマー戦につなげようと考えてました。冨安の右サイドバックに関しては、所属クラブで右サイドバックをやっていることが多いので、日本代表のオプションとしてそこでプレーすると、どういう効果をもたらすか。そのことを考えつつ、冨安だけでなく、植田(直通)が所属チームでいいプレーをしていることも確認しているので、彼も使いながらと考え、冨安を右サイドバックに持っていきました。冨安だけでなく、チーム全体のことも考えていろんなオプションを持てるようにしたい。そのために、どういう戦いができるかを探っています。その意味でも、(途中から)ポジションを変えて戦いました」

 後半は日本代表の顔ぶれが代わり、初めてピッチでともにプレーする選手が多かったこともあってコンビネーション面でスムーズさに欠ける場面も見られた。その意味で2得点を記録した前半に比べて、チーム全体としては攻撃面で物足りなさが残ったのは事実だが、それでも指揮官の言葉からは「冨安の右サイドバックは十分にあり」とのニュアンスが感じ取れた。

 試合前からゲーム途中でのポジションチェンジを指揮官に言われていたという冨安は試合をこう振り返った。

「(右サイドバックも)違和感なくやれたと思います。もちろん、(所属するボローニャと)まったく同じ役割を求められたわけではないですけど、問題なく入れたと思います。
 森保さんからも、どこをやるにしても、良さを出してくれればいいから、と言われたので。与えられたポジションで思い切ってプレーするだけだと思います」

 右サイドバックを務めた代表での最初の試合としてはまずまず、といったところだろうか。一方で修正すべき自らの課題についても触れている。クロスを入れた試合終了間際の場面を振り返りながら。

「(板倉)滉くんから思っていたとおりのボールが来たので、そこで、中を見て、間に合ってないなって感じたので、あそこでもう一個、何か工夫できれば、よりビッグチャンスになったかなって思います。また映像を見て、いろいろ打開策が出てくればいいかなと」

 そしてプレーが切れた際に森保監督と会話していた内容について問われると、こう話した。

「(長友)佑都さんもけっこう(前に)行っていたので、カウンター対策についてです。リスクマネジメントのところの指示を受けたので、(橋本)拳人くんに伝えて。でも、それは前半から僕ら後ろも言っていた部分だったので、森保さんから見てもパーフェクトじゃないと感じたんじゃないですか」

 攻撃と守備。そのバランスについては、さらに精度を高めていく必要があるという。それはCBと右サイドバックというポジションの違いに関わらず、突き詰めるべきチームとしての課題でもあるだろう。

「攻撃のときはサイドバックも、ちょっと中に絞りながらプレーするから、3枚っぽくなるので、完全なサイドバックではないですけど、やっていて楽しいですし、攻撃、守備ともに今まで求められていたことと違ったことを求められるので、(自分の)成長に繋がると思います」

 本人も言う通りは、代表での右サイドバックは「オプションのひとつ」。ただ、「サイドバックをやるときは、そのポジションで自分のやれることをやってチームに貢献できればいい」と、その役割を理解している。

 今年1月のアジアカップでけが人が続出し、大会が進むにつれてメンバー編成に苦労したが、9月10日から始まるワールドカップ予選も、その先に待つ本大会も、同じくチームは限られた人数で戦わなければならない。当然ながら、複数のポジションができる選手の存在は大きなプラスだ。
『冨安の右サイドバック』は代表ではまだ1試合試したに過ぎないものの、今後、森保ジャパンにとって大きな実りとなる可能性がある。

写真◎福地和男

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