クラブ史に残る大観衆が詰めかけたホームゲームで、岡山が劇的な勝利を収めた。後半に先制されたものの、試合終了間際の2得点で逆転勝ち。口火を切ったのは、負傷明けの一戦で『伝家の宝刀』直接FKを決めた、上田康太の同点ゴールだった。

上写真=FKを蹴る前にコースを見定める上田。向かって左の上を鮮やかに抜いた(写真◎J.LEAGUE)

■2019年7月7日 J2リーグ第21節
 岡山 2-1 鹿児島
 得点者:(岡)上田康太、中野誠也
     (鹿)韓勇太

8人の人壁を破る

 この日の観客数は、クラブのホームゲーム史上3位となる1万5731人。シティライトスタジアムのスタンドが埋め尽くされた一戦は、岡山県内も多くの被害に見舞われた、昨年の西日本豪雨から1年の節目という意味でも特別な試合だった。だが前半のチャンスを生かせず0-0で後半に入ると、57分に相手の素早いリスタートへの反応が一瞬、遅れたスキを突かれ、鹿児島FW韓勇太に先制点を奪われてしまう。

 何とか反撃したい状況で74分、岡山の有馬賢二監督がMF久保田和音に代わって送り込んだのが、上田だった。4月14日の第9節・千葉戦で左大腿部の肉離れを起こし、戦列を離れてから約3カ月ぶりの復帰戦。登場時の大きな拍手は観客の期待の大きさの表れで、そのまま0-1で迎えた86分、それに見事に応えてみせる。

 ゴール正面、約20メートルの距離からの直接FKのチャンスで左足を一閃。鹿児島は8人が人壁を作り、なおかつキックの瞬間に大きくジャンプしたが、その上を越えてから鋭く落ちたボールは、横っ飛びで懸命に伸ばした鹿児島GKアン・ジュンスの両手の先を抜け、ネットを揺らした。

 このゴールで勢いづいた岡山は、さらに攻め立ててPKを獲得し、89分に同じく交代出場のFW中野誠也が決めて逆転。残り数分間で勝利をもぎ取り、4試合ぶりの勝利を収めた。

 試合後、上田は久しぶりの出場について「もっと緊張すると思ったんですけど、ファーストタッチで良いプレーができたので、落ち着くことができた」と笑顔。出場直後にゴール前でパスを受けると、右サイドを駆け上がったDF椋原健太に浮き球のパスを送り、いきなり決定機を演出したことでリズムに乗ったという。直接FKは「しっかり、冷静に、集中して蹴ることができた。思った通りのボールを蹴ることができたと思う」と振り返った。

 「最高の復帰戦になったと思いますが、まだまだ僕はチームに貢献できなかった時間が長いので、取り返していきたい。90分間プレーできたわけではないので、ここからが個人として勝負。チームとしても勝負だと思う」と今後に目を向ける。前半戦最後の第21節で、後半戦に向けて勢いづく勝利を物にした岡山。7月7日の七夕の夜にふさわしい、『7+7=14番』の鮮やかな復活劇だった。

取材◎石倉利英 写真◎J.LEAGUE

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