キリンチャレンジカップの2連戦を終え、キャプテンを務めるなど、柴崎岳はチームをけん引する役割を担った。宮城県で行なわれたエルサルバドル戦の試合後にはチームが新たなにトライした3バックの手応えとコパ・アメリカに向けての意気込み、そして代表選手の一員として「帰ってきた」東北への思いを口にした。

上写真=エルサルバドル戦は80分から登場した柴崎(写真◎小山真司)

■6月9日 キリンチャンレンジカップ2019(@ひとめぼれスタジアム宮城)
 日本 2-0 エルサルバドル
 得点者:(日)永井謙佑2

3バックに挑戦できたことはよかった

 5日のトニダード・トバゴ戦も、9日のエルサルバドル戦も、日本代表は森保一監督が就任以来、採用してきた4-2-3-1ではなく、3-4-2-1のフォーメーションで試合に臨んだ。それほどインテンシティの高いチームが相手ではなかった点を差し引いても、最初にしては「まずます」というのが、おおむね選手たちの反応だった。

 チームの中心である柴崎もまた、ポジティブな面について触れた。

「何かを得るためには、やってみないとわからないことがあるので、3バックに挑戦できたことはよかったと思います。これから磨き上げる余地はたくさんありますけど、十分、ブラッシュアップすれば使えるものだと思いますし、一つのオプションになり得ると思います。それがこの2戦をやった収穫かなと思います」

 最初の段階からすべてがうまくいくわけもない。今回の2試合に関しては、トライしたことに意味がある。重要なのは、そのあと。出た課題とどう向き合うかだ。

「3バックをやるにはそれなりに時間が必要ですし、クラブチームであっても習得するのは短期間ではできないことです。ましてや代表となるれば、限られた時間の中でやらなければいけない。成熟度を上げるのであれば、4バックのほうが(質問者が)おっしゃた通り、みんなが慣れているポジションだとは思います。でも先ほども言った通り、この2連戦でトライできたことは大きな収穫なので、状況によって使い分けできる部分はあると思う」

 指揮官はかねてより、臨機応変に戦うことや相手に柔軟性に対応することを求めてきた。今回のトライの意味を、選手もよくわかっている。エルサルバドル戦はベンチスタートで、柴崎がピッチに登場したときは、すでにチームがフォーメーションを4-2-3-1に変えた後だった。「変化に対応するのは当たり前のこと」と話す柴崎は今後、3バックの習得していく上で何をすべきなのかについても、自身の考えがあるという。

「こうすればもうちょっといいかなというのは、個人的にはありますし、でも練習しないと、そのへんは何ともできない部分もある。(現時点で)これ(=3-4-2-1)を中心に、というのは考えづらいかなと思います。相手によってだったり状況によってだったり、フォーメーションというか選手の配置で優位に立てるときもあるのかなという感じなので」
 
 トライして、課題を整理し、修正して、成長につなげていく。そのサイクルがうまく回ったときに、当然ながらチームは進化を遂げる。だから柴崎は「トライしたこと」の意義について言及したのだろう。

明るい雰囲気を持ち込めていたらうれしい

画像: 試合後、ファンの声援に応えて歩く柴崎と昌子

試合後、ファンの声援に応えて歩く柴崎と昌子

 柴崎はこのあと、17日にチリとの初戦を迎えるコパ・アメリカに臨む。東京五輪世代が多く加わる若いチームにあって、ますます求められる役割を多くなるはずだ。

「非常にハイレベルで、ワールドカップ級のレベルを求められると思うので、相当集中しないと一瞬でやられてしまう大会だと思います。若い選手も多いですけど、その中でもしっかりと指揮をとって彼らと一緒に戦いたいと思っていますし、個人としても、もちろん良い経験になる。挑戦の場でもありますし、自分が今、どれだけそういった大会でできるのかという一つのトライだし、今の実力の証明にもなると思うので。親善試合とはまたスイッチを入れ替えて、集中して臨みたいと思います」

 このところの代表戦では、試合のたびに柴崎の存在感と重要性が増していると映る。その存在が、若い選手たちに与える影響も大きいはずだ。そしてもちろん、柴崎はそのことに自覚的でもある。そうでなければ「しっかりと指揮をとって」という言葉は出ないだろう。

 そして、エルサルバドル戦の取材エリアで記者の質問に丁寧に答えたあとで、柴崎は自ら口を開く形で東北のファンにメッセージを送った。

「なかなか東北の地で日本代表が試合をすることはないので非常に良い機会になったと思います。心なしか、僕の名前の入ったグッズがちらほらと、いつもよりは多いようにも思えたので、帰ってきたなという空気感もありますし、そこは非常にファンの皆さんに感謝したいと思います。震災の傷もまだまだ、癒えていない部分は多いと思うので、この試合が少しでも、日本代表チームとして明るいニュースだったりとか、そういった雰囲気というのを持ち込めていたらと。そう感じてくれたのなら、うれしいことだと思っています」

 それは青森出身で、『東北人魂』のプロジェクトなど、鹿島時代からさまざまな支援活動を続けてきた柴崎らしい言葉だった。

取材◎佐藤 景 写真◎小山真司/BBM


This article is a sponsored article by
''.