快勝したメキシコ戦の翌日、日本代表は第3戦の舞台であるビドゴシュチへと移動した。練習はオフとなり、影山雅永監督が取材に応じた。そこで口にしたのは「世界を経験する意義」だった。

上写真=U-20代表を率いる影山監督(左) 写真◎Getty Images

「名前とか肩書きとかではビビらない」

 メキシコ戦は攻守に歯車がかみ合い、3-0と完勝。北中米・カリブ海の強豪国を破り、グループステージ突破に大きく近づいた。3ゴールを奪った攻撃陣はもちろんだが、ディエゴ・ライネスという世代屈指のアタッカーを擁する相手を完封した守備陣の奮闘ぶりも称賛されるべきだろう。

 試合の翌日、影山雅永監督に日本の守備陣の話を聞くと、次のように話した。

「U-17代表のときからずっと(一緒に)やっているのが大きいですよ。彼らにとっては、インドで、イングランドとやったのが基準になっていますから」

 メキシコ戦に先発出場したDFは、右から菅原由勢(名古屋)、瀬古歩夢(C大阪)、小林友希(神戸)、鈴木冬一(湘南)。4人のうち瀬古を除く3人が、1年半前に行なわれたU-17ワールドカップを経験している(瀬古は負傷の影響もあり本大会は選外となった)。プレーする環境や会場間の移動など過酷な状況の中で戦い、ラウンド16では最終的に大会を制するイングランドとPK戦にまでもつれる激闘を演じた。指揮官は、その経験の大きさを強調する。

「(彼らにとっては)あのイングランドの(ジェイドン・)サンチョ(ドルトムント=ドイツ)などが基準になっている。だから、そういう大会に出ることは、日本人にとって大事だなと思いますね。(相手を)『強いな』と思いながらも、『こんなにすごい相手と戦える、たまらないな』と思えるのか、それとも(相手を)怖いと思ってしまうのかは、すごく違うじゃないですか。2000年(生まれ)の選手たちは、U-17ワールドカップに出て、その後、U-19代表に入るサイクルとなっている。それで経験値を積み重ねていくことは、(選手の成長において)間違いなく大きいことですよ」

 26日のメキシコ戦で言うならば、世界最高峰のスペインリーグで活躍するライネスを相手にも、選手たちは物怖じすることがなかった。

 試合後には、菅原が「僕は名前とか肩書きとかでビビるヤツじゃない」と言い、瀬古も「注目選手なのは分かっていたし、すごく巧い選手。(ライネスを)全員で囲めばと思っていたので、うまくやれたと思います」と冷静な表情で振り返った。影山監督が話すように、U-17ワールドカップなどで数々の強豪国と対戦することによって、選手たちの意識が“世界基準”となっていく。そのメンタリティーが体現されたのが、まさに今大会でもある。

「1年半前に比べてみんなが成長しているし、00ジャパン(2000年生まれの選手たち)だからこそ生み出せる空気とか雰囲気がある。バックラインの4人とGKの若原(智哉)を含めて、助け合う精神ができてきたかなと思います」(鈴木冬一)

 世界王者の前に悔し涙を流してから1年半の時を経て、ここまでの2試合で成長の証を見せている選手たち。今大会ではベスト16の壁を越え、さらなる経験値を得るために、5月29日(日本時間30日)のイタリア戦でグループステージ突破を懸ける。

取材◎小林康幸


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