※上写真=左サイドで何度も果敢な突破を試みた香川
写真◎Getty Images

■2018年11月25日 J1参入プレーオフ1回戦
大宮 0-1 東京V
得点者:(東)平智広

 J1参入を懸けたプレーオフの1回戦は、J2・5位の大宮と6位の東京Vの対戦となった。引き分けではJ2上位成績の大宮が勝ち上がるため、勝利が絶対条件の東京Vは、立ち上がりからボールを支配し、試合の主導権を握る。ただ、ゴールに迫っても得点を挙げることはできず、0-0で前半を終える。後半、東京Vは退場者を出して数的不利を強いられるも、71分に佐藤優平のFKに平智広が合わせて先制。その後の大宮の反撃をしのぎ切り、横浜FCとの2回戦に駒を進めた。

J1昇格へ「誰よりも特別な気持ちはある」

【動画】東京Vが大宮を敵地で下す! 平智広が値千金の決勝弾!

 退場者を出した直後のワンプレーが、決勝ゴールの伏線となった。

 59分に中盤を支えていた内田達也が2度目の警告を受け、東京Vは残り時間を10人で勝利を目指すこととなる。だが、「チームとして勝たなければいけない試合なので、後ろを厚くするよりも、そのままにして攻撃的に行こうと、みんなで集まって話した」と香川勇気が振り返るように、緑の選手たちは攻勢をゆるめない。その意思を示すかのように、63分に左ウイングバックの香川が左サイドを果敢に突破し、シュートを放って相手ゴールを脅かした。

 このシュートは相手DFにブロックされるものの、このとき香川は、相手にとって優位な状況で起こり得る、わずかな戦局の変化を感じ取っていた。「(東京Vの)右サイドから(ボールが)流れてくると、相手がなかなかスライドしきれていないな、という感覚はあったし、こちらに一人退場者が出て、大宮は引き分けでもいい状況なので、(ボールホルダーへの)アプローチとか1対1の部分で、少しゆるくなってきているかなぁ、と。自分たちも逆の立場だったら、そうなったと思うんですけれど」

 そして、70分に再び左サイドの突破を試みる。スピードに乗った状態で佐藤優平からのパスを受けると、対峙した大宮のDFがたまらずファウルを犯す。「前半から、ああいう深い位置でのフリーキックはチャンスだと思っていた。突破を仕掛ければ何かが起こると思った」。この香川が得たフリーキックが、平智広の値千金の決勝ゴールを生んだ。

 香川は昨季から長崎に在籍し、昨年はJ1昇格を経験。だが、待望のJ1の舞台では2試合しか出番がなく、夏に東京Vへ期限付き移籍した。「自分はJ1で2試合しか出場できていないし、長崎にいたときもあまり戦力にはなれなかった。(J1との)レベルの差を感じていた」と、悔しい経験もしているだけに、「今、(東京Vの一員として)そこに挑戦できるのは、やりがいのあること。ヴェルディとしても昇格したい気持ちがすごく強いけれど、そこは誰よりも特別な気持ちはある」と、語気を強める。

「(J1昇格のために)自分たちは勝つしかない。こういう試合はなかなかできないと思うし、その試合で勝ち切れたことは、みんなのサッカー人生やヴェルディの歴史においても、すごくプラスなことになったんじゃないかと思う」

 東京Vが再びJ1の舞台へ羽ばたくために――。左の翼は、次の横浜FC戦(12月2日)でも走り続ける。

取材◎小林康幸


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