ルヴァン杯 プレーオフステージ 第2戦
浦和 2-1 甲府
得点者:(浦)興梠2
    (甲)小塚
※2試合合計 2-3で甲府が準々決勝に進出

※28歳の島川はJ1、J2、J3、JFLと全カテゴリーでプレーした経験を持つ。写真は第1戦のもの。 写真◎J.LEAGUE PHOTOS

 甲府は第2戦に敗れたが、アウェーゴールを挙げて、準々決勝へ進出。前半は浦和にボールを支配されて2失点を喫したが、少ない好機を得点につなげた。27分に小塚和季がこぼれ球に詰めてゴール。後半はプレスをかけて、ショートカウンターでも反撃し、スコアは1-2のままで終了した。甲府は2試合合計で上回り、2007年以来11年ぶりの8強入り。浦和は前半の1失点が響いた。

「タイトルを取りたい」

 プロ10年目の苦労人。甲府の島川俊朗は今季、Jリーグ通算100試合出場を達成したばかり。「ようやくという感じ。遅すぎましたね。ほとんどJ3の記録ですが……」と照れ笑いを浮かべるが、埼玉スタジアムでの初プレーは堂々としていた。激しいプレスをかけ、浦和の攻撃陣と球際の争いでは互角以上に渡り合う。後半から投入された柏木陽介にも仕事らしい仕事はさせなかった。
「必死で走った。かなりしんどかったですよ」
 苦笑いを浮かべる顔にも、充実感が漂っていた。

「この環境、雰囲気は最高だった。すごく気持ち良かった」
 空席が目立ったとはいえ、2万2664人が詰めかけた。J2では味わえない雰囲気だ。J1の浦和との試合は、最後まで楽んだ。
「うまい選手とできるのが本当にうれしくて。もっと上のレベルで試合がしたい。いまここでサッカーできていることに感謝したい」
 どん底を知る28歳の言葉には実感がこもっていた。柏ユースから期待のセンターバックとして仙台入りしたが、左ヒザの半月板損傷、右足関節の脱臼骨折など度重なるケガに苦しめられた。J2の東京V、当時JFLのブラウブリッツ秋田へのレンタル移籍も経験。仙台には計5年間在籍したが、リーグ戦出場はなし。13年にブラウブリッツ秋田へ完全移籍し、JFLから再出発。J3でも地道に試合経験を積み、山口(J2)、栃木(当時J3)でもプレーした。

 一方で、柏ユースの同期たちは輝かしいキャリアを積んでいる。欧州で活躍し、日本代表としてW杯に出場する酒井宏樹をはじめ、広島の工藤壮人、浦和の武富孝介もいる。かつて一緒にボールを蹴っていた仲間の活躍はずっと見ているが、島川が卑屈になることはない。足元をしっかり見つめ、「どこに行っても、真面目にサッカーに取り組んできたし、真摯に向き合ってきた」と胸を張る。心が折れそうになったときも、サッカーへの思いだけは変わらなかった。
「少しでもうまくなりたいと思ってやってきた。俺はヘタだから。手を抜いたら終わり。必死に練習しないと、必死に走らないと。その気持ちはずっと思っている」

 昨年、ユース時代の恩師でもある吉田達磨前監督に声をかけられて、甲府入り。「拾ってもらったようなもの。感謝しかありません」と、しみじみ話す。今季途中で上野展裕監督に交代しても、攻守の要として中盤で存在感を示している。センターバックとしてプロになったが、いまではボランチがすっかり板に付いている。
「プロとしてサッカーを続けさせてもらっていることに感謝したい。最初の仙台は5年も見捨てずに面倒を見てくれましたし。僕は多くの人に支えられてきた。もっとサッカーを続けたい。もっとうまくなって、もっとうまい選手たちとプレーがしたい。だから、ルヴァン杯は楽しい。ここからはもっと楽しみ。タイトルを取りたいですね。試合が増えて体はしんどいけど、僕は平気です」
 決して順風満帆ではない。それでも、島川はプロサッカー人生の一日一日をかみ締めながら過ごしている。

取材◎杉園昌之


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