プレーオフ・ムアントン戦で2ゴール。「ゴールへの強い気持ちがある」

1月30日、柏はAFCチャンピオンズリーグ(ACL)プレーオフでタイのムアントン・ユナイテッドを寄せ付けず、3-0で勝利し、2月13日に開幕するACL本戦へと進出した。2月からJリーグに加わるタイ代表のFWティーラシン・デーンダー(広島加入)とDFティーラトン・ブンマタン(神戸加入)も、ムアントンの一員として戦う最後の試合ということもあり、「(ムアントンは)オーガナイズされている素晴らしいチームなだけに、簡単なゲームにはならないと予想していた」(下平隆宏監督)。だが、ふたを開けてみれば、幸先よいシーズンのスタートとなった。

勝利の立役者となったのは、FWクリスティアーノだ。前半を0-0で折り返すも、「なるべく早く得点を取らなければならないという気持ちではあったけれど、前半からチャンスは作れていた。ハーフタイムのロッカールームも落ち着いていたよ」と、焦れることなく後半に入り2ゴールを挙げた。「サッカーは相手のゴールネットを揺らしてなんぼのスポーツ。ゴールに対してはとても強い気持ちを持っている」と、ストライカーとしての真価を示した。

ゴールという結果を期待される助っ人ではあるが、それだけが仕事ではない。前線から労を惜しまぬプレスで、相手の守備ラインに圧力をかける。この日、5人のDFを並べてきたムアントンの最終ラインをずるずると押し下げ、柏の中盤より後ろの選手がスムーズにパス回しをできるように献身的に動いた。「守備も終始安定していた。称賛に価することだと思う」と、チーム全体の出来に胸を張った。

この日のクリスティアーノの貢献度は、ムアントンのブラジル人アタッカーのそれと比べると雲泥の差があった。前日にDF中山雄太が「(ムアントンは)攻撃にストロングポイントがある。特に前線のブラジル人選手」と警戒していたが、先発したFWヘベルチは前線までボールが入らないと持ち場を離れて中盤に下がりパス裁きに終始。2点ビハインドの場面で投入されたFWジャジャ・コエリョも、ほとんどボールに触れず存在感はなかった。チームのなかでの自らの役目を認識し、それを効果的に結果へと還元していくクリスティアーノのパフォーマンスとの差は一目瞭然だった。

「前半にいくつか不用意なミスが目立ったようには思うけれど、両サイドからとても効果的な攻め上がりもできていた」
「(相手のサイドのスペースが)狙い目だったことは間違いないが、反省点として挙げられるポイントの一つでもある。もっと前線にボールを付ける頻度が高くてもよかったと、自分では思っている」
「(先制ゴールの)最初の動き出しは、もちろんパスが来るだろうと信じてのもの。ただ、前のスペースにもっと有効的なパスを流し込めていれば、あのような形でもっと得点を取れたのではないか」

試合後、クリスティアーノの口から出てくる言葉は、チームの良かった点に加え、反省点も多かった。それだけ、チーム全体を考えてプレーしていたということだろう。76分にMF大谷秀和が退いた後はキャプテンマークを左腕に巻くなど、いまや単なる助っ人のひとりではない。チームリーダーとしての存在感も示している。ピッチ外でも「ピッチ内でのパフォーマンスの向上を狙って」(クリスティアーノ)、昨年末から栄養士を雇うなど、さらなる進化に余念がない。

今季で柏在籍4年目。今では、3シーズン前のACLを知る数少ない選手のひとりともなった。そんなクリスティアーノに、ACLとはどのような大会なのか問うと、「いろいろな意味でサプライズのある大会」との答えが返ってきた。

「たとえば昨年に関して言うならば、昨季のリーグ戦でなら、うちのほうが浦和レッズよりも良い戦いができていたのではないかと思うけれど、ACLでは浦和レッズがチャンピオンになった」
つまり、柏にもアジアの頂点に立てる地力、資格があるとの自負がある。だからこそ、その力を証明するために、クラブに初のアジアタイトルをもたらしたいーー。自らの2ゴールでプレーオフを突破し、まずはその第一歩を踏み出せた。

「今年は上位を目指している。ノックアウトラウンドになると戦いがよりタフになるので、そのなかでも良い意味でのサプライズを起こしていければと思っている」

アジアの舞台でクリスティアーノが起こす歓喜の“サプライズ”を期待せずにはいられない。


文◎小林康幸


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