セリエAのラツィオの選手として、8月20日に開幕戦を迎える鎌田大地(日本代表)が、1人の人間として大きく成長したのが京都・東山高校時代の3年間だったという。ここでは先ごろ発売となった『ブレない信念――12人が証言する サッカー日本代表 鎌田大地の成長物語』(森田将義・著/ベースボール・マガジン社・刊)からエピソードを抜粋。キャプテンを務めた東山高校3年生時、人となりが垣間見える話を紹介する(エピソード4・連載最終回)。

高校サッカーを通じて大人になった

 高校時代から間近で見てきた中村が感じる大地のすごさは、目標に向かって進み続ける向上心である。

「鎌田大地という人間は、技術もすごいですが、メンタリティーがすごいんです。明確な目標が常にあって、それに対して真面目ですし、満足しません。すごく貪欲です。心が折れる瞬間があるとは思いますが、弱音を吐きません。そのあたりは、プライドかなと感じます」

 福重は、「大地を育てた」という表現を嫌う。

「『育てた』なんて、おこがましくて言えません。僕はそんなにすごい指導者ではないので、『関わった』、『携わった』としか言えません。東山のような弱いチームに、大地みたいな選手が来てくれてよかったです」

 この言葉からは、指導に対する信念と選手への思いが感じられる。

「大地は高校サッカーを通じて大人になったなという感覚があります。3年間で、そこが一番大きく変わったところです。サッカー選手が持っているものを持っていましたし、プレーの精度が上がりました。でも、精度に関しては、プロになってからの方が上がっています。

 高校では、人としての部分の伸びがすごくありました。僕は、サッカー選手にはそこが大事になると思って指導しています。人としての部分は関係ないと思っている指導者もいますが、それはそれでかまいません。でも、僕は、人として成長しなければうまくならないと思っています。神様は絶対に見てくれているという考えで常にやってきました。

 高校時代は『何くそ、ボケ』と言っていたとしても、いつかわかってくれる子がいてくれると思います。『僕のことを尊敬しろ』とか『恩師だと思え』ではなくて、どこかのタイミングで、あのとき、おっさんがそんなことを言っていたなと思い返してくれるだけでいいんです。それが教育者や指導者としての仕事ですし、それが嫌なら、プロの監督やコーチをやっていればいいでしょう」

 そう言って笑う福重を大地は恩師だと思っているはずである。<連載終了>

文◎森田将義