U−23日本代表がいよいよパリオリンピックの初戦、パラグアイ戦に臨む(現地24日/日本時間25日2時)。チームを率いる大岩剛監督は五輪代表特有の難しい条件の中で強化を図ってきたが、立ち上げから示してきたロードマップの最終段階を迎え、指揮官は今、何を思うのか。パリへ旅立つ前に行ったインタビューを掲載する(発売中のサッカーマガジン8月号増刊『パリ・オリンピック展望&五輪日本代表HISTORY BOOK』に収録)。

一歩一歩を山を登ってファイナルに進む

カメラマンのリクエストに応じてU23フランス代表のティエリ・アンリ監督とポーズをとる大岩剛監督(写真◎Getty Images)

――安易な比較論については、メディアに関わる者として反省するところです。

大岩 歴史からは当然、逃れられない。釜本(邦茂)さんの時代の銅メダル以上の成績を求められるのは理解できます。ただ、たとえば連続出場という話になったときに、今の選手たちにとってはパリ大会に出るか出ないかであって、過去から続く歴史がどうこうというのは、自分ごとではないわけです。それを言うことは、ただ日本国民からのプレッシャーを受ける形になりかねない。それに打ち勝ってこそという考え方もありますが、僕自身は選手にそういう言葉を伝えなかった。われわれにはわれわれのターゲットがあると言い続けてきました。アジアチャンピオンになってパリ五輪に出るというのは、あくまでわれわれ単体の目標として掲げたものです。

――では、監督が繰り返し話しているパリでファイナル進出、金メダルというのも、あくまでこのチームの目標ということですね。

大岩 最初からロードマップにしっかりある目標です。

――パリ五輪のグループステージの対戦国についても聞かせてください。パラグアイ、マリ、イスラエルという順に対戦します。

大岩 マリは対戦経験があり、パラグアイは映像を見ましたが、南米予選で強豪を破って出てきたので当然、簡単な相手じゃない。イスラエルも同じでヨーロッパの代表ですから、難しい試合になると思っています。ただ、U23アジアカップでもそうだったのですが、予想したところで選手が頻繁に変わるので、登録選手が出て、直前の親善試合を見て初めて予想が立つ。現時点でも考えはありますけど、分析は直前になります。

――マリとは3月に京都で対戦し、1-3で敗れました。その経験はポジティブなのかネガティブなのか。

大岩 めちゃくちゃポジティブですね。2つ理由があって、一つは身体能力を含め、アフリカ特有の特徴を直に体験できたこと。もう一つは負けたことで引き締まったということです。U23アジアカップ前だったこともあり、昨年11月にアルゼンチンに勝ったことによって変な自信を持ってほしくはなかった。その中で敗れて、世界は甘くないと危機感を持てたのは大きかったと思います。

――大会ではどんな戦いを見せてくれるでしょうか。

大岩 一歩一歩、山を登ってファイナルに進み、そこで金メダルを取る。これは選手と共有している目標です。われわれの戦いをぜひ、見届けてください。

プロフィール◎おおいわ・ごう/1972年6月23日生まれ。静岡県出身。現役時代はDF。清水商高から筑波大を経て95年に名古屋に加入。当時のアーセン・ベンゲル監督によってサイドバックからセンターバックへとコンバートされる。新人年から38試合に出場。95、99年の天皇杯制覇に貢献。2000年に日本代表に選出され、国際Aマッチ3試合に出場。同年途中に磐田に移籍し、02年に2ステージ完全優勝。翌03年に鹿島に移籍し、10年の引退までにリーグ優勝3回、天皇杯優勝2回など数々のタイトルを獲得した。引退後は11年から17年(16年はサテライト監督兼任)まで鹿島トップチームコーチを務め、17年5月に監督就任。18年にACL制覇。19年をもって退任し、JFAインストラクターに。21年にU-18日本代表監督、22年にパリ五輪を目指すU-21日本代表監督に就任し、24年はU23アジアカップでパリ五輪出場を決めるとともに、優勝に導いた。