U−23日本代表がいよいよパリオリンピックの初戦、パラグアイ戦に臨む(現地24日/日本時間25日2時)。チームを率いる大岩剛監督は五輪代表特有の難しい条件の中で強化を図ってきたが、立ち上げから示してきたロードマップの最終段階を迎え、指揮官は今、何を思うのか。パリへ旅立つ前に行ったインタビューを掲載する(発売中のサッカーマガジン8月号増刊『パリ・オリンピック展望&五輪日本代表HISTORY BOOK』に収録)。

招集が難しくなる未来に向けて考えるべきこと

AFC U23アジアカップで優勝し、日本はアジア王者としてパリオリンピックに臨む(写真◎Getty Images)

――今年1月にはA代表のアジアカップもあり、他のアジアの国々の進化をあらためて感じることになりました。U23アジアカップを戦う中で日本の立ち位置について、大岩監督はどんなことを感じましたか。

大岩 U-23という枠組みの中でも、日本の立場をあらためて確認することができました。韓国が五輪出場を逃したり、インドネシアがグループステージを勝ち上がったりとアジアの勢力図にも変化が起こっている。その中で、日本が出場権を取ることの重要性とその難しさについて痛感しました。いろいろなことを考えさせられた大会でした。

――具体的にはどんなことですか。

大岩 五輪は開催時期の問題があり、今後、海外でプレーする選手が増えるなら、招集はますます難しくなっていくと思います。Jクラブも同様で、今後はもっとシビアな判断をするケースが出てくるかもしれない。そういう状況を踏まえて、日本サッカーがこれから、どうやって五輪に向き合っていくのかを考えなければいけないと思います。今回の最終予選(U23アジアカップ)はイレギュラーな時期に開催され(当初の1月から4月に変更)、次回はそうならないとは思いますが、重要な時期にある選手たちがIW外で活動するのはいずれにせよ、制限がかかります。

――年齢制限がある以上、しかも極めて微妙な時期にある選手が中心でプレーする五輪を、A代表につながる成長の場ととらえるのか、メダル獲得を目指す場なのか、その点の議論もまだまだ尽くされていないように感じます。

大岩 いろいろな考え方、意見があるのは確かだと思います。サッカー界でそれをまとめていくこともこれからは必要かもしれません。大学生が出場するユニバーシアードという国際大会がなくなりました。では、その世代のために五輪には大学生が出るという考え方もできるかもしれない。ほかの競技とは異なり、U-23という特殊な制限がある大会で、大学生はまさにその世代に当たりますから。これは極論ですが、いろいろな議論があっていいし、これまでも活動する中で僕の立場から感じたことはしっかり発信し、協会内で共有できるようにしてきました。

――日本サッカーの金字塔として68年のメキシコ五輪における銅メダル獲得があり、その歴史を更新することが当たり前の目標となっているとも言えます。当時はまだ夢のまた夢だったワールドカップに連続出場を続けている現在とでは状況が大きく異なるにもかかわらず。

大岩 われわれは代表チームであり、大会に出る以上は勝利を目指すのは当然ですが、未来を見据えて言うのなら、選手の成長なのか、メダルを目指すのか、どういう前提のもとで強化していくのかを考える時期に来ていると思います。選手の招集が難しくなっている中で、今、岐路に立っているのかもしれない。広く言えば、これはオーバーエイジの招集にもかかわる話でもあり、例えば北京やロンドン、リオ、東京大会と比べても選手の立場が全然違う。もはや過去と比較することはできないと僕自身は思っています。