勝つことで見えなくなるものをうやむやにしない
――斉藤光毅選手や三戸舜介選手らは久々の活動でした。
大岩 そういうチームであることを6月の活動であらためて確認できましたし、相手が昨年敗れているアメリカで(✕1-4)、本大会に出るチームだったので、現在のわれわれの状態を知るという意味でも遠征は貴重な機会になりました(今回は〇2-0で勝利)。これはU23アジアカップのあとにも言ったことですが、勝つことで見えなくなってしまうことも、やはりあります。それをうやむやにせず、明確にすることが重要で、負けたときと同じように振り返り、突き詰めるべきところを突き詰める。そういう厳しさを求めながら6月は活動できました。
――U23アジアカップ後に「この結果が何かを約束するわけではない」との発言もありました。それでもアジア王者になったことはチームにとって大きかったのではないですか。
大岩 それはもちろん。五輪の出場権が懸かった大会なので、選手もスタッフもそちらに意識が持っていかれて、大きなプレッシャーを感じる中で戦いましたが、だからこそ得られたものがある。それはチームがさらに成長するために必要な要素の一つだったと思います。その経験はやはり大きいものでした。
――実際、大会前は過去と比べても難しい大会になるとの見方もある中で、試合を戦うたびにチームが一つになっていったように見えました。
大岩 大会前の低い評価であったり、SNSを通して大会中に選手自身が、個人に対する評価を目にすることもあったと思います。ただ、そこから生まれる反発心によってチームが一体になることもある。そういう部分も少なからずあったと思います。それからこれは以前、元日本代表監督の方がおっしゃっていたことですが、アクシデントが起きるとチームが一つになりやすいケースがあると。意図してやるわけではないですが、初戦から難しい戦いが続く中で団結力が強まった面もあったと感じます。
――SNSの話が出ましたが、大岩監督自身が鹿島アントラーズを率いていた5年前と比べて、選手を取り巻く環境の変化を感じますか。それに伴って監督自身のマネジメントを変えた部分もあるでしょうか。
大岩 僕自身がマネジメントを変えたということはないですね。環境の変化には選手が対応していくしかないと思っています。試合前に携帯電話を見ているし、試合後もロッカールームに戻ればすぐに携帯を見ている選手がいる。でもそういうところから情報を入れるか入れないかは本人次第で、こちらがコントロールすることではないと思っています。そもそも情報をネガティブにとらえる人間もいれば、ポジティブに変換できる人間もいる。そこは昔から変わらないところで、メンタルの持ちようやサッカーへの向き合い方もそれほど昔と変わったとは思いません。