日本時間25日(23時開始)、U―23日本代表は『AFC U23アジアカップ』の準々決勝に臨む。開催国のカタールと対戦することになったが、アウェーの雰囲気は限定的であり、昨年対戦して勝利を収めたチームでもあり、過度な警戒は必要ないだろう。ポイントは本来の力をいかに出していくか。現地から決戦直前の日本チームについてリポートする。

上写真=前日会見に出席した大岩剛監督と藤田譲瑠チマ主将(写真◎AFC)

強度を発揮するための準備は万端

 25日、AFC U23アジアカップを戦っているU-23日本代表は、最大の決戦とも言える準々決勝・カタール戦を迎える。

 22日の韓国戦から中2日とインターバルは短く、本格的なトレーニングは前日の1日だけ。また前々日の23日にグラウンドへ姿を現したのも、韓国戦に出場しなかった選手を中心とするわずか9名だった。メニューは軽く汗を流してボールを蹴り合うものが主体で、対人プレーは行わず、40分ほどで切り上げている。

 大岩剛監督はここまで選手起用も含めて徹底してコンディショニングを優先してきた。「現代サッカーで不可欠の要素」と位置付ける強度を発揮するためであり、極めて重要なこの準々決勝に、選手を可能な限りベストな状態で臨ませるためだった。

 グループステージ最終節・韓国戦のラインナップも、この試合でベストの状態を作り出すために逆算して導き出されていた可能性が高い。おそらくカタール戦には、韓国戦から大幅に入れ替わった先発メンバーがピッチに並ぶことになりそうだ。

 対するカタールもオーストラリアとのグループステージ最終節はメンバーを刷新。主力を休養させて、日本戦へ照準を合わせている。ヴァーレ監督によれば、初戦で負傷したA代表でもあるFWアルラウィの復帰も視野に入れているとのこと。「オリンピックへの出場権獲得という目的をもって臨んでいる大会」(ヴァーレ監督)において、「最も重要になる試合」と位置付ける日本戦へ万全の態勢を整えている。

「明日は、精神的にも肉体的にも非常に準備の整ったチームが日本に勝利する姿を見ることになる」。カタールの指揮官はそう言って公式記者会見の最後を締めくくった。

 ただ、そのアルラウィも含めた選手たちと“大岩ジャパン”はすでに対戦済み。昨年秋のアジア競技大会グループステージ初戦で激突し、日本が3―1と勝利を収めている。日本側はMF佐藤恵允(ブレーメン)とFW内野航太郎(筑波大)くらいしかマトモに出場していないのだが、カタールは当時から継続しているチーム編成。参考になる『生』のデータを多く取得できているのはポジティブな材料だ。

 大岩監督も「年月が経っており、同じではない」としつつ、「ただ選手の情報をたくさん持っているのは強みだと思うので、生かしていきたい」と、相手側の分析データを活用していく意向だ。

 巷間、「完全アウェー」などと煽られたりもしているこのカタール戦だが、サポーターの熱は限定的で、そこまで途轍もない雰囲気になるわけではない。Jリーグの舞台、あるいはACLも経験している選手もおり、極端に浮き足立つこともないだろう。

 開催国びいきの判定についても色々と言われているが、むしろ「不利な判定をされるかもしれない」と変に萎縮するほうが危険だろう。指揮官はジャッジについてこう語る。

「そういうことが起こらないように注意しながらも、いざ起きた時にも我々のやるべきことがはっきりしていれば混乱はない。そういう送り出し方をしたいなと思っています」

 気に病んでも仕方ない話で、起きたら起きたで対応すればいい。ある意味、中国との初戦で“予行演習済み”とも言えるわけで、VAR含めて振り回される必要はない。「まず自分たちのプレーを出すことが大事」というのは、全員が共有していることでもある。

 25日、「負けたら終わり」と位置付けられがちな試合だが、「勝てば五輪切符が大きく近づく」試合とポジティブに位置付け、チャレンジするべきだろう。そうした前向きな姿勢で試合に入ることが、勝利をも引き寄せるはずだ。

取材・文◎川端暁彦