U-24日本代表は6日、U-24メキシコ代表と3位決定戦を戦い、1-3で完敗した。林遼平氏による短期集中連載『蹴球五輪雑記』の最終回は、大会終盤に日本が突き付けられた現実と、選手たちが感じた世界との差について綴る。

上写真=試合後、悔し涙を流す田中碧(写真◎JMPA渡部薫)

文◎林 遼平 

勝負どころで勝てないのが、また表に出た(冨安)

 試合後、ピッチ上には両者の明確なコントラストが映し出されていた。歓喜に沸くメキシコ、静かに涙を流す日本。無観客のスタジアムがより一層、勝者と敗者を際立たせていた。

 3位決定戦に臨んだ日本は、メキシコに負けた。完敗だった。

 中2日の連戦による疲労に加え、金メダルを目指していた中で準決勝のスペイン戦に敗れたショックもあり、身体的にも精神的にもギリギリのところで試合に挑んでいた。その中で、フワッとした入りを見せると序盤にPKを献上して失点。FKから追加点を奪われ、そこからは為す術がなかった。終盤に三笘薫のゴールで1点は返したが、それ以上に相手にチャンスがあったことを考えると、1-3の敗戦は妥当な結果だったと言える。

「本当に不甲斐ない」。準決勝を出場停止で欠場し、満を持してメキシコ戦に臨んだ冨安健洋は、ここぞの勝負に勝てなかった悔しさを口にした。

「勝負どころで勝てないというのが、今回また表に出たというか、そこを変えていかないといけないと思います。育ってきた環境もあると思うし、簡単に変わっていかないものだとも思いますけど、この状況を変えていかないと勝っていけない。本当に当たり前というか、普通にプレーして勝てるような強い国にならないといけないと思います」

 あと一歩のところで勝てない。

 それは今大会だけに限ったことではない。9年前のロンドン五輪や直近のワールドカップもそう。東京五輪世代だけを見ても、トゥーロン国際大会やアジア大会など、最後のところで勝って終わることができなかった。

 繰り返される歴史。これをいち早く変えていかなければ、日本は再び今回のような悲しい終幕を迎えることになるだろう。

 それには今大会を通して見られた課題を次なる戦いへつなげていく必要がある。個で相手をどれだけ上回れていたのか、組織では相手に通用していたのか、22人の選手運用はどうだったのか、指揮官の采配はうまくいっていたのか。一つずつ挙げていけばキリがない。わかったのは、まだまだ世界と差があるということだ。

「悔しいなという一言と、世界は遠いなというのを突き尽きられた2試合だった。今まで親善試合でいろいろな海外のチームとやりましたけど、結局は練習試合。こういう国際大会で圧倒的な差を突き付けられたところがある。やはりどうにかしてこの差を埋めていかないといけない。自分たちが思っている以上に彼らは成長しているし、このままではスピードという意味では全く追い付かないと思う」(田中碧)

 大会を通して心を震わせてくれる素晴らしいチームだった。それでも結果が全てのプロの世界。メダリストではなく、オリンピアンで終えた事実は変わらない。この悔し涙は次への糧としなければならない。

「来年どれだけの選手がW杯に残っているか。これからの活躍が大事だと思います。次のカタールの大会、そしてその次の大会でどれだけの選手が主力になっているか。そこが一番大事だと思います」(吉田麻也)

 ここで立ち止まるのではなく、成長スピードを早めてブラッシュアップしていくことができるか。日本がワールドカップで上を目指していくためには、若き侍たちのさらなる成長が求められている。

著者プロフィール◎はやし・りょうへい/埼玉県出身。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。その後、フリーランスに転身。サッカー専門新聞「エルゴラッソ」の番記者を経て、現在は様々な媒体で現場の今を伝えている