ノックアウトラウンドで見えてきたもの
攻撃面に目を移せば、決勝トーナメントに入って以降の3試合であげた得点はこの日の三笘の1点だけ。それは疲労が蓄積する中で、日本の武器である2列目の流動性が失われたことと無関係ではないだろう。
今回のチームは、オーバーエイジの3人をすべて守備陣に活用した。その結果が安定した戦いを実現したのは間違いなく、その選択は正しかったと言える。ただ、期待したはずの五輪世代の攻撃陣が負ければ終わりのステージに至り、つまりはよりレベルが高く、リスク管理の行き届いた相手との戦いにあっては振るわなかったのも事実だ。堂安は「(攻撃陣として)責任を感じている」と振り返ったが、いかに点を取っていくかについてはチームとして、もっと突き詰める必要があった。疲労が蓄積し、流動性や連動性が失われたときに、すなわち久保や堂安がピッチにいない際にいかにゴールを目指すか。上田や三笘のケガもあったにせよ、攻撃オプションの数が限られていた感は否めない。
采配面でもメダルマッチという重要な試合で前半のうちに2点リードを許す苦しい展開にありながら、後半開始からゲームのリズムやテンポを大きく変えるカードを切らなかった点は気になった。63分まで2枚替えを我慢したことは結果的にはマイナスとなったと映る。
タフな日程の中、6試合を戦い抜いた経験はチームにとってもちろん貴重だ。若い選手が五輪でしか得られないタフな経験を積んだ。それらが日本サッカーの財産になるのは間違いないだろう。ただ、一方で、メダル獲得を掲げてその目標に到達できなかったことも事実だ。何が足りず、何を得なければいけないのか。同じ条件で戦ってメダリストになった国との差にしっかり目を向ける必要がある。
試合後、ピッチで泣き崩れた久保や涙を拭う選手たちの姿からは、この大会にいかに懸けていたかが伝わってきた。しかしまだまだチームとして世界の強豪に伍していく力はなかった。PK戦で勝利を飾ったものの、準々決勝のニュージーランド(NZ)戦は120分の試合では0-0のドローだった。準決勝のスペイン戦は0-1で延長後半に失点し、敗れている。そして3位決定戦は1-3でメキシコに完敗。ノックアウトラウンドに入って以降、日本は1試合も勝てていない(NZ戦も記録上は0-0)。この現実を受け止めて、ここからどう日本のサッカーを進化させていくかが問われることになる。
1968年のメキシコ五輪で日本は3位決定戦に臨み、地元メキシコを破った。今回は図らずも半世紀ぶりに相手にリベンジされた格好。ロンドン五輪で優勝し、今回は銅メダルを獲得。メキシコはあの敗戦から進化している。
「このすべての経験は選手の血となり肉となり、選手の成長につながると思っています」
指揮官が言う通り、日本も今大会得た収穫も課題も、次につなげなければならない。吉田キャプテンも「キャリアは続いていく。ここからどうするかが重要」と話した。
日本のメダルへの挑戦は、4位という結果で幕を閉じた。世界は近いようでまだまだ遠い。日本にとって多くの収穫があり、課題も浮き彫りになった熱い16日間だった。