上写真=ボールを狩り、前へ運ぶプレーで中盤を制圧した遠藤航。まさに獅子奮迅の働きだった(写真◎JMPA)
文◎林 遼平 写真◎JMPA
リオ五輪よりプレーに関して自信を持てている
これまでとは明らかに違った。
キックオフ直後からエンジン全開。中央に入ってきた選手には猛烈なプレッシングをかけ、少しでもボール処理にもたつく選手がいれば素早い寄せでボールを回収した。ドリブルで前に運ぼうとする選手には球際のバトルで勝利し、奪っては前への推進力を発揮してゴールへと向かう。
大会前の強化試合を含め、もう一つコンディションが上がっていないように見えていた遠藤航は、メキシコ戦で別格の存在感を示してみせたのである。
『デュエルキング』。昨季、ブンデスリーガの舞台で自身の特徴である対人戦の強さを発揮し、デュエル勝利数でリーグトップの数字を叩き出したことから、遠藤にはそんな呼び名が付くようになった。
もともと、球際の強さは日本でも圧倒的だった。ただ、海外に渡って向上したのはボールを奪う技術だ。相手の体の向きや姿勢、次にどんな行動をしようとしているのか。それを的確に判断してボールを奪取する。日本で培ったものを欧州でレベルアップさせ、その感覚をどんどん研ぎ澄ましていった。
オーバーエイジとして迎えた2度目のオリンピック。遠藤の言葉には自信が溢れていた。
「前回のオリンピックと比べて、プレーに関してはすごく自信を持てている。前回の経験もそうですし、ブンデス1部でずっとプレーすることができたことを含めると、少し自分の中で気持ち的な余裕があるのかなと。今は自分のプレーに集中しているし、A代表でやっていたプレーやブンデスで見せているプレーを出せれば、チームにしっかり貢献ができると思っています」
欧州でのシーズンを終えた後ということもあり、大会前の強化試合はコンディション面に不安を感じさせていた。らしからぬパスミスがあったり、プレッシャーをかわされたりと、もう一歩、上がってきていないように見えていた。
だが、迎えたメキシコ戦は、これまでとは比較にならないパフォーマンスを披露。中盤で相手の攻撃を何度も抑え、勝利に大きく貢献した。
ここにきてなぜギアが一段も二段も上がったのか。遠藤の言葉を聞けば、グループリーグ突破のため、重要な第2戦に照準を当てていたことがわかる。
「南アフリカ戦は相手がブロック敷いた中での戦いだったので、エネルギーをためていたわけではないけど余裕はあった。そういう意味では、1戦目ももちろん大事だけど、そこで勝てた中での今回のメキシコ戦。(前日までの状況で言えば)勝てば突破が決まる可能性がゼロではなかったので、ここに賭ける思いは個人的に強かった」
見据えていた第2戦で、ブンデスリーガで評価を高める所以をピッチで示した遠藤。次のフランス戦ではさらに存在感を発揮することで、チームを決勝トーナメントへと導いてくれるはずだ。
著者プロフィール◎はやし・りょうへい/埼玉県出身。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。その後、フリーランスに転身。サッカー専門新聞「エルゴラッソ」の番記者を経て、現在は様々な媒体で現場の今を伝えている