U-24日本代表は17日、東京五輪に向けた最後の準備試合として、U-24スペイン戦に臨んだ。序盤はボールを持たれる苦しい展開も耐えしのいで堂安律が先制ゴールをスコア。後半、ゴールを献上することになったが、攻めではアグレッシブに、守備では粘り強さを発揮した収穫の多いドローだった。

上写真=先制点を挙げた堂安律。4試合連続ゴールだった(写真◎JMPA毛受亮介)

■2021年7月17日 国際親善試合(@ノエビアS/観衆4,909人)
U-24日本 1-1 U-24スペイン
得点者:(日)堂安律
    (ス)カルロス・ソレール

・日本メンバー:GK谷晃生(46分:大迫敬介)、DF酒井宏樹(46分:橋岡大樹)、吉田麻也(46分:瀬古歩夢)、冨安健洋(46分:町田大樹)、旗手怜央、MF遠藤航(46分:田中碧)、板倉滉、堂安律(46分:三好康児)、久保建英、相馬勇紀(80分:中山雄太)、FW林大地(46分:前田大然)

・スペインメンバー:GKウナイ・シモン(80分:アルバロ・フェルナンデス)、DFオスカル・ヒル、 オスカル・ミンゲサ(56分:エリック・ガルシア)、パウ・トーレス、フアン・ミランダ(80分:マルク・ククレジャ)、MFミケル・メリノ(56分:カルロス・ソレール)、マルティン・スビメンディ(46分:ジョン・モンカヨラ)、ダニ・セバージョス(68分ペドリ・ゴンザレス)、FWマルコ・アセンシオ(68分:ハビ・プアド)、ラファ・ミル(46分:ミケル・オヤルサバル)、ダニ・オルモ(46分:ブライアン・ヒル)

耐えしのぐ集中力

 序盤の日本はボールを奪いにいっては外され、構えては回された。さすがは優勝候補の一角に挙げられる2019年のU-21ヨーロッパ選手権王者。スペインのパスワークとテンポに適応できず、30分過ぎまでは苦しい戦いを強いられた。

 戦前、吉田主将は「苦しい時間帯の乗り切り方、ゲームの割り切り方が大事なってくると思う」と話していたが、日本はセカンドボールも回収できず、連続攻撃を受けることにもなったこの難しい時間を集中した守りで耐えしのぐ。最後の局面ではしっかり対応し、GK谷の好守もあって失点を免れた。そして飲水タイムを境に次第に前に出る回数を増やしていった。

 33分に放った久保のシュートは相手のブロックに阻まれ、34分の右CKは板倉が頭で狙ったものの、枠を外れた。40分にはボックス内でボールを収めた林が反転シュート。これまたバーの上へと外れたが、徐々に日本が相手ゴールに迫り始める。そして42分。流れの中でスペインゴールをこじ開けてみせた。左サイドでボールを受けた久保が相手守備者を外してボックス方向へとボールを運び、中央へパス。そこに走り込んできた堂安は左足を合わせ、ゴール左隅を射抜いた。堂安はこれで4戦連発。10番の責任を繰り返し語ってきた男が、優勝候補との対戦でもしっかりその力を示した。

 オーバーエイジを加えて臨んだ6月シリーズでは日本がボールを持つ試合が多く、耐えしのぐ展開は五輪仕様のチームとして初めての経験だった。しかし、スペイン優勢の時間帯にも焦れずに対応し、機を逃さずに先制ゴールを奪った。試合の運び方としても、前半の戦い方はチームの成長を感じさせるものだった。

同点にされてもアグレッシブに

 後半、日本はスタートから7人メンバーを代え、スペインも3人を代えた。大会初戦を5日後に控え、コンディションを考慮したためだが、さらにスペインは56分に2人、68分にも2人を交代。前半とは顔ぶれが大きく異なり、試合の様相も仕切り直したかのようになる。再びスペインが押し込み、日本がしのぐ展開が続いた。後半から登場したGK大迫が好守でゴールを守り、耐えしのいでいたが、78分にスキを突かれて失点をしてしまった。ミランダとペドリのパス交換から右サイドを破られると、最後はハビ・プアドの左足シュートを許す。ソレールにわずかに当たってコースが変わり、右のポストの内側に当たってゴールイン。守備の人数はそろっていたが、シュートを打させてしまったことが結果的には痛かった。

 ただ、そこからガタガタと崩れることはなかった。日本はそこで気落ちることなく、しっかりファイティングポーズをとる。アグレッシブな姿勢を見せた。互いに攻守の切り替えが激しくオープンな展開になる中で、84分に三好のスルーパスに抜け出して上田がシュートを放ち、アディショナルタイムの田中の直接FKであわやの場面を演出。最後まで勝利を求めてプレーした。

 結局試合は決着がつかずに1-1で終わることとなった。とはいえ、相手のコンディションが整っていなかった点を差し引いても、優勝候補との渡り合ったという結果は悪くない。しかも、欲していた収穫を手にすることもできた。森保一監督は言った。

「この試合を勝つことを目標として臨んだので、勝ち切れなかったのは残念ですけど、選手たちが粘り強くやっていくトライしてくれたことはよかったと思います。(収穫は?)強い相手との戦いで、得点を奪うことができたのはよかった。2点目を奪うことはできなかったですが、ただ守るだけじゃなくて選手たちがトライしてくれたのはよかったと思います。守備の部分では1失点していて、これはある程度仕方のないところもあると思いますけど、もっと相手のボールを奪う守備であったり、相手が困る守備をできればと思います」

 課題ももちろんある。だが、耐える守備とその後に連動してゴールを奪い切ったのはやはり収穫だろう。そしてもう一つ、指揮官が強調したのは選手の判断する力だ。「きょうの試合を通して、監督の指示待ちでは対応するのではなくて、その状況に応じて理想と現実を把握しながら選手たちがコミュニケーションを取って対応してくれた。その結果、我慢強い戦いの中でも前半、チャンスを作れて1-0とリードすることができた。選手たちのコミュニケーション能力や修正力を、より発揮してもらえるように準備してきたいと思います」。

 修正力は森保監督が就任以来、一貫して選手に求めてきた要素。五輪本大会前、最後の試合で、選手はピッチ内で判断し、対応する力も示した。日本にとっては多くの手応えをつかむ準備試合になった。

 試合後の会見の最後に森保監督は決意を語った。

「厳しい戦いとなることは覚悟しなければいけない。その中でも粘り強く戦いながら、攻撃も勇気をもってトライしていくということができれば必ず結果を出せると思っています」

 大会の初戦は22日。日本は5日後の南アフリカとの対戦から、金メダルへの道を歩み出す。

取材◎佐藤 景