U-24日本代表は12日、東京五輪に向けたテストマッチとして、U-24ホンジュラス戦に臨んだ。チームとして確認と共有を進めた上で、3-1で勝利。試合後、森保一監督は「ゲーム勘が取り戻せた、ゲームの体力がしっかりと上がった、そしてチームのコンセプトが共有できた」と手応えを語った。

上写真=先制点を挙げた吉田麻也(写真◎JMPA毛受亮介)

■2021年7月12日 国際親善試合(@ヨドコウ桜/観衆4,063人)
U-24日本 3-1 U-24ホンジュラス
得点者:(日)吉田麻也、堂安律2
    (ホ)オウンゴール

躍動し引き締まった前半。後半はやや失速

 22人で五輪本大会を戦うと明言する森保監督は、ホンジュラスとのテストマッチに以下の11人を先発させた。GKは谷。3月シリーズ、6月シリーズで評価を高めた守護神だ。DFは左から酒井、吉田、冨安、中山。A代表の主軸の3人を組み込み、ディフェンスラインを組み上げた。ドイスボランチには遠藤と成長著しい田中が入り、日本の武器であり、生命線である2列目は左から堂安、久保、三好が並んだ。そして1トップには林。

 ACL組の三笘薫と旗手怜央はこの試合の当日、瀬古歩夢は2日前にチームに合流したばかりでベンチ外。相馬は一足先にACLを戦ったタイから戻ったものの、ベンチスタートになった。前線では今月5日から始まった合宿でしばらく別メニュー調整を続けていた上田綺世がベンチ外で、同じく試合直前まで別メニュー調整だった前田も控えメンバーとなった。

 こうした事情を踏まえると、この日のスタメンがそのまま初戦の南アフリカ戦やグループステージ第2節のメキシコ戦のメンバーというわけではないだろう。ただ、本番を見据えた試合であることに変わりはなく、チームのベースの部分や核となるユニットの機能性を確認する意味があった。

 例えば4バック。長くA代表でプレーする3人に中山が加わったことで、どう機能するのか。前半は相手の強度がそれほど高くなかったこともあり、安定していた。散発的な相手の攻撃にしっかり対応。その上で吉田はFKから先制点をスコアし、冨安はボール奪取から攻撃に出る推進力を見せて堂安のゴールの起点になった。酒井は縦に走っては相手の守備を広げ、守備では1対1で無類の強さを見せた。そして中山は左サイドバックとしてのキャリアこそ浅いがこの日は問題なくプレー。ビルドアップの局面で斜めのパスがズレる場面もあったが、本人が「トライ・アンド・エラー」をしたいと話していた通り、サイドバックとして積極的な姿勢が見て取れた。

 しかし後半、一瞬のスキを突かれてしまう。途中出場のリゴベルト・リバスに右サイドでスルーパスを通されると、GK谷が前に出るのか、ディフェンス陣がクリアするのか、中途半端なプレーとなり、処理しきれずにオウンゴールで失点した。指揮官は「後半に入って、相手が5人フレッシュな選手を入れてきた中でわれわれが選手を交代しなかった。相手から押し込まれるというところもある程度、想定していましたが、それでも何とか前半同様に、攻撃のクオリティーを出して相手が前に出てくるところにゴールを奪えたらよかった。反省すべきところがあります」と、あえて交代を我慢し、体力的に厳しい中で3点目を取りにいくことを選択。その結果、相手に流れを渡したことを反省した。

 失点に絡むことになった冨安も「後半はミスが増え、縦パスが通らなくなった」と指摘。ゲーム状況を見極めて、プレーをしっかり選択してことが必要だと課題を挙げた。浮き彫りになったこれらの課題は、残り時間でしっかり詰めていくことになる。

確実に前進できた試合(森保監督)

 中盤では2人のボランチが互いの位置を確認しつつ、チームのバランスを保った。ビルドアップの局面では攻撃が停滞しないようにポジションを取り、ボールを展開。縦パスを入れてテンポを出し、ペースを自在に操ってゲームをうまくコントロールしていった。守備でも田中のパスがカットされた59分の場面が象徴的だが、攻撃から守備へ切り替わった瞬間に遠藤が素早いアプローチでボールを回収。ボランチコンビは攻守両面でその力を発揮した。

 2列目の3人は前半、流動的な動きで攻撃を活性化した。互いにポジションを入れ替えながらチャンスを生み、ゴールをうかがう。28分に堂安、久保とつないで林のシュートを生んだシーンや、冨安のクロスから三好がスルー、林が落として堂安が決めた40分の場面など、3人の呼吸が合えば、チャンスやゴールにつながった。もちろん、その呼吸が合わず、ボールをロストする場面も見られたが、前半に見せた相手守備陣に的を絞らせない動きはやはり日本の武器だろう。左に三笘や相馬が入った場合は単独突破も有効で、3人とはまた違う攻めが可能だ。実際、後半途中で登場した相馬のアーリークロスから堂安が得点したが、組み合わせによって攻撃の特徴を変えられることをこの日、改めて確認することができた。

 2列目の選手たちが前向きでプレーできたのは、1トップに林が入っていたことも大きかった。相手を背負うことを厭わない林は、何度もボールを収め、後方に落として堂安や久保をゴールに向かわせた。堂安のゴールを最後にアシストしたのも、林だった。ただ、自身は28分にフリーで打ったシュートがGKの正面を突くなど、何度か訪れた決定機を決め切れなかった。本大会までの短い時間で「自分の立ち位置を上げたい」と語っていた林にすれば、上田や前田とは異なるポストワークという特徴を示し、その上でゴールを決めたいところだろう。

 戦前、森保監督は「積み重ねてきたものの確認と意識の共有」をホンジュラス戦のテーマに掲げていたが、果たしてそのテーマはしっかり施行された。

「1カ月くらい試合をしていない選手が多くてなかなか難しい試合でしたが、このスタジアムでサポーターの皆さんとテレビの前で応援してくれている皆さんが声援を送ってくれたおかげで、良い準備ができたと思います。チームの完成度という意味ではまだまだ上げていかなければいけないところがありますけど、今日のチームの状態、選手のコンディションからすれば、今日の試合でゲーム勘が取り戻せた。ゲームの体力がしっかりと上がった、そしてチームのコンセプトが共有できたというところでは確実に前進できたいい試合だったと思います」

 とくに前半はチームコンセプトの根幹である「素早い攻守の切り替え」と「選手の距離感」を意識してプレーし、ホンジュラスを圧倒した。指揮官が指摘した通り、この時間をいかに長くしていくかが重要になる。本大会が酷暑の中で行なわれることも踏まえて、90分をどう使うかも考えなくてはならない。

 大会初戦まであと10日。「皆さんが喜んでいただけるような結果を出したいと思っています。これからも最善の準備を続けてオリンピック本大会に向かいたいと思います」と森保監督。チームは17日にU-24スペイン代表と最後のテストマッチを戦い、「最善の準備をして」南アフリカとの試合に臨む。

取材◎佐藤 景 写真◎JMPA毛受亮介