川崎フロンターレからドイツ2部のフォルトゥナ・デュッセルドルフに新天地を求めた田中碧。ヨーロッパでの冒険を始める前に、東京オリンピックの金メダル獲得というミッションに挑む。それが実現できれば、ドイツでも箔がつくというものだ。田中のフットボール人生で大きな大きな挑戦が、始まろうとしている。

上写真=東京オリンピックに向けた最終調整でも元気いっぱいの田中碧。金メダルへの挑戦が始まる(写真◎山口高明)

「実力以上の見えない何かを味方につける」

 田中碧がいま、人生最高の挑戦に向き合っている。東京オリンピックの金メダル獲得、そして移籍を決めたドイツ2部フォルトゥナ・デュッセルドルフでの活躍。2つの夢をかなえるときが来た。

「(オリンピックのメンバー入りは)もちろんうれしく思いますし、ただ、ここからがスタートというか、金メダルを取るためにやっています。自分たちが優勝することで、入れなかった選手もそうですし、日本サッカーの価値が上がると思っています。まずはしっかりと集中して、毎日やれればいいかなと思います」

 フォーカスしていることは2つ。初戦と決勝戦だ。

「初戦ですね、いちばん大事なのは。勝ち点3を手にできるか1を拾うか0なのかで、グループステージの戦い方が変わります。金メダルを目指しているので、決勝で一番のパフォーマンスをしなければならないと思います。もちろんどの試合も100パーセントでやりますし、グループステージで厳しい戦いを強いられると思いますけど、より厳しくなってくると最後の方に力が残らなくなってしまう。だからこそ初戦で勝ち点3を取って、勢いとか結束力、そして実力以上の見えない何かを味方につけるのが大事だと思います」

 決勝のために、初戦に必ず勝つ。金メダルからの逆算ですべてを整えていく。その流れの中で、自らの役割もしっかりとイメージできている。一言で言えば、目立たないこと。

「前の選手たちにうまくボールを届けることが自分の役割ですし、守備においても自分のところでボールを取ることが役割で、なおかつゲームをコントロールできればいいのかなと思います。自分が目立たないぐらいに前の選手たちがしっかり活躍してくれることが、自分が仕事をしている関係になると思うので、前の選手たちにゴールだったりアシストだったり、気持ちよくプレーしてもらえるようにプレーできればと思います」

 ボランチとしては、そのゲームコントロールが試されそうだ。オーバーエイジの遠藤航と組んで舵取りを担うことが期待されている。

「連戦にもなるので、ボールを保持するのか、攻めきるのか、奪いにいくのか、一回ステイするのか、時間の使い方もそうですし、よりシビアにやらなければいけないのかなと思います」

 目立たず試合を回して、一番目立つメダルを手にする。世界一のために必要な田中の青写真は、もうくっきりと描かれている。