上写真=本大会に向けてトレーニングする鈴木彩艶(写真◎山口高明)
チャンス拡大も自分がやるべきことは変わらない
パリ五輪世代ながら『飛び級』で東京五輪のメンバー入りを果たした。当初は登録の18人に不測の事態が起きたときのバックアップメンバーだったが、本大会では試合後ごとに登録メンバーを入れ替えることが可能となり、試合に出場する可能性が広がった。とはいえ、本人の心構えに変化はないという。
「チャンスは増えたと思いますけど、自分としてはやるべきことは変わらないかなと思います」
それは何も、3番手という立場を受け入れたという意味ではない。合宿で自らの力をアピールしていくつもりだ。大迫敬介、谷晃生に負けない自身の特長について聞かれると、「自分自身、セービングの伸びがあるので、ぎりぎりのところで最後のひと伸びができる。その部分は負けないと思っていますし、攻撃のところではキックの飛距離があるので、一発で(相手の)背後でチャンスつくるというところでも負けたくないです」ときっぱりと答えた。
合宿2日目も川口能活GKコーチの指導のもと、熱のこもった練習をこなした。「能活さんのトレーニングは連続系が多いので、息が上がりながらも、そこで技術、丁寧さを発揮することが大事になってきます。そういう部分で僕はまだまだ。スピードが上がったときの技術が伴っていなかったりするので、その精度を上げたい」と精力的に課題に取り組んでいる。特に川口GKコーチには二つの事を言われているという。
「一つはシュートに対してキャッチするのか弾くのか。弾くにしてもどこに弾くのか。シュート前のポジショニングも高過ぎず、下がり過ぎずというところを細かく言われています。最後にチームをどれだけ助けられるかについても言われているので、自分自身の力を発揮して、チームに良い影響を与えられるようにしたい」
もちろん、将来に向けて貴重な経験を積んでいるが、今、目指しているのはパリ五輪に向けて成長することではなく、東京五輪で金メダルを目指すチームに貢献することだ。
「(パリ大会への)期待も込められているかもしれないですけど、ここに選ばれた以上は、このチームで金メダルを目指して戦っていきたいと思います」
「GKに求められるシュートを止めるということもそうですけど、暑い環境の中で日本らしく戦う、ボールを保持するサッカーというのが重要になってくると思う。ビルドアップの部分でいかにマイボールにしながら、相手のゴールに迫っていけるかだと思うので、自分のフィードから味方に確実につなげることだったり、チャンスを作ったりすることが大事になってくる」
自分の持ち味をチームの中で生かし、その上で勝利を導くーー。2021年夏。戦う場所はパリではなく、東京。18歳、鈴木彩艶の挑戦が始まった。