U-24日本代表のMF田中碧が8日、オンラインで取材に応じ、「今まで一番悔しかった」という3日のA代表との試合、そして本大会を想定して組まれた5日のU-24ガーナ戦をについて、自らが感じた課題とA代表の選手たちとの違いについて語った。

上写真=時折、笑顔を見せながらメディアの質問に答えた田中碧(写真◎スクリーンショット)

遠藤航は「すごく頭を使ってプレーする選手」と評価

 A代表との試合、そしてU-24代表に加わったオーバーエイジ3人やA代表常連の同世代の選手たちと過ごす中で、改めて田中の中で目指すべき基準ができた。それはチームにとっても、自身の成長を加速させる上でも重要な『体験』となっている。

「(A代表との試合で)自分が出た後半で差を感じた部分ももちろんありますけど、前半の強度や質の高さは正直、間違いなく後半よりも高いものがあると見ていて感じた。ピッチに立っていないので分からない部分もありますけど、あれだけ技術だったり力のある選手たちがあれだけの強度でやるというのは、少なくともJリーグでは体感できないレベルではあるのかなと。その中でもやっていかなければいけないというのをより感じた。そこの何だろうな、意識なのか、フィジカル的なレベルもそうですし、技術的なものもそうですし、差をすごく感じたというか。そこを目指さなきゃいけないと改めて気づかせてくれました」

 5日に行なわれたU-24ガーナ代表との試合では、時間の経過とともに調子を上げた。最初はOAの選手たちに対して遠慮も見られたが、次第に要求するところは要求し、中盤で存在感を増していった。試合後にはボランチでコンビを組んだ遠藤航について「いままで一緒にやってきた選手の中では段違い」とそのプレーぶりに驚きと刺激を受けていたが、一方で遠藤も「ボールを受けたときの前を見るところだったり、常にどういうポジショニングを取ったほうがいいか、すごく工夫していて、頭を使いながらプレーしている選手だなと感じました。ガーナ戦に関しては攻撃はもちろん、守備の部分でもしっかり潰すところを潰していたし、カウンターを抑えるところも何回か出せたと思う。攻守においてすごくいいプレーをしていた」と田中を評価した。

 ガーナ戦で実現した新たなボランチコンビが、大いなる可能性を示したのは間違いないだろう。ただ田中自身は手ごたえよりも成長の必要性を口にする。

「守備の1対1の部分で負けないというか、そこの部分はよりこだわっていかなければいけないし、仮に抜かれたとしてもファウルで止めるとか、そういう部分はもっともっと自分自身でやっていかなければいけない。キレイに取るだけじゃなくて、力づくでも取る作業を増やしていかなければと感じています」

「(A代表との試合で)一段も二段もレベルが違ったと感じました。自分が長くやってきたものがまだまだ足りないというか、そういうものを感じさせるゲームだった。決してネガティブにとらえていないですけど、これからの自分の楽しみになるような色々な気づきがありました」

 今季J1で田中は攻守両面で圧倒的な存在感を示しており、すでに国内ではトップレベルに位置するボランチと言っていい。ただ、そこで満足せず、今回の活動でさらに上のレベルを体感し、自らの扉を開こうとしているようだ。

 ガーナ戦の終盤は、田中は吉田や遠藤にもボールを要求し、受けてはしっかりチームを回していった。パスが集まるようになったのは、預けどころとして信頼を得た証。どの程度のプレッシャーなら預けていい選手なのか、預けたらどんなプレーで攻撃をデザインしてくれるのか、OAの選手たちの中で田中の存在がインプットされたということだろう。

 かつては東京五輪は別世界の話で、自分には関係のないものだと感じていたという。しかし19年のトゥーロン国際大会以降、コンスタントに招集され、今年3月にA代表経験組とともにU-24アルゼンチン代表戦を戦ったことで完全にスイッチが入った。今は、視線の先にしっかり五輪をとらえている。

「航くんもけっこう真ん中でどっしり構えてくれる部分があるので、もう少し自分が前でプレーできる時間を増やせれば。そこは少しずつやりながら距離感もそうですし、お互いの立ち位置を見ながら変えていければもっと良くなると思います」

 次戦のジャマイカ戦に向けて(12日)、イメージを膨らませていた。合宿中にも、1試合の中でも多くを吸収し、成長し続けているように映る。次の試合でもさらにアップデートされた田中碧が見られそうだ。五輪本大会まで1カ月半。ここから始まる物語には期待しかない。