上写真=田中碧の存在感は圧倒的。「勝つことが自分のアピールでした」(写真◎Getty Images)
■2021年3月29日 国際親善試合(@北九州スタジアム/観衆:7,302人)
U-24日本 3-0 U-24アルゼンチン
得点者:(日)林大地、板倉滉2
「自分の感覚とチームのプレーが合っていた」
あまり見慣れない背番号17が、ピッチの上に立つほかの21人全員を支配していた。それほどまでに、田中碧の存在感は圧倒的だった。
「僕自身はそんなに圧を感じなかったですね。まだまだやれると感じていました」
U-24アルゼンチン代表との2連戦で田中碧は初戦に出場停止。この1試合にかけていた。仲間が初戦で苦しんだアルゼンチンの個の強さも、田中には物足りないぐらいだった。
ボランチに入ってボール受け、さばき、相手に渡ったら奪いきり、周囲をサポートして数的優位をつくり、ラストパスを送り、クリアし、とすべてがハイパフォーマンスだった。
「間に立ちながらいろいろな人を使う役割ができればいいと思っていました。ボールを届けることが大事で、納得のいくパスもありましたし、初めてやる選手が多い中でしたけど、いいコンビネーションができたことを含めて手応えはあります」
ゲームをコントロールする選手に特有の「鳥の目」も手に入れつつあるという。ピッチに立ちながら全体を俯瞰するシックスセンス。
「敵の攻撃もそんなに形があるわけではなかったですし、ピッチの中央に立っていて上から見ている感覚というか、どうすればハマるのかは計算というかイメージができるようになってきました。いろんな選手にそれを伝えれば個人的にもやりやすくなりますし、チームもいい方向にいくと思います。声で味方を動かしてゲーム作るのも大事で、少しはできたかなと思います」
ほかにも「できたこと」はたくさんあった。
「2点取るまではボールを握っていて、僕自身も裏を狙ってみたり少し広げて幅を使ったり、守備に関しても行くところと行かないところの判断はできたと思います。前回の試合では相手のロングボールでピンチになりましたけど、今回は蹴らせないことももちろんですけど、蹴ってきたボールにも反応できていて、ラインコントロールもできたし、自分の感覚とチームのプレーが合っていたと思います」
でも、オリンピックで本当に勝つためには、足りないことだらけだと危機感を口を突く。
「欲を言えば、後半も握りたかったですね。オリンピックを考えたときに、これだけタフな試合をし続けていくと決勝で力が残っていない可能性がなきにしもあらずだと思うので、(体力をコントロールするために)後半も握る時間を増やさなければいけないと思います」
「自分が奪われてシュートを打たれた場面がありました。相手は見えていたのに取られてしまって、入れば失点でしたから」
「攻撃でも縦パスを入れたけれど、そこは相手のセンターバックやボランチが警戒していて、受けた選手にスペースや時間がありませんでした。そこで自分がもう一度サポートしたり、違う選手に入れる工夫はできたと思います」
「全体的にサイドからの攻撃が増えたので、中を割る動きも見せないといけないですし、実際に中を割れるんじゃないかという感覚がありました。そこに自分が入っていかなければより高いレベルで勝てません。取り切れないこともあったし、まだまだ足りないなと感じました」
ボランチで組んだ板倉滉とは川崎フロンターレのジュニア時代からの知り合いで、プロとしては初めてともにプレーしたのだという。「滉くんが2点取って、主役は持っていかれました」と笑った。
しかし、自己評価は「まだまだ」であったとしても、この日の圧巻のプレーが「主役以上」の存在感だったことは間違いない。