上写真=選手全員が高い守備意識を備えているが、田中碧と前田大然のプレーは圧巻だった(写真◎JMPA毛受亮介)
齊藤俊秀コーチが命名した日本流プレスバック
引き分け以上で、自力でのグループ突破が決まる日本は、スウェーデン戦においてリスクを管理した戦いが求められていた。
試合前日の公式会見で森保一監督は、言った。
「1位通過を目指したい気持ちはありますけど、大量得点を狙いにいって、チームのバランスを崩して、選手起用を変えてチームのやっていることが逆にバラバラになることはリスク。自分たちがやるべきことをしっかり考えられるチーム状態だと思います」
当然、勝利を狙うものの、最低限、勝ち点1を獲得することがミッションだった。
果たして日本は、勝ち点1を手にし、グループFの2位でラウンド32進出を決めた。前田大然のゴールで先制したことを思えば、勝ち切れなかったことは悔やまれるが、逆に言うと、『負けない』試合ができるチームになったとも見ることができる。実際、試合ではそう感じさせるシーンが散見した。
とりわけ象徴的だったのが、切り替えの早さと強度である。素早切り替えからのプレスバックを日本の強みとしてチームに浸透させるために、守備を担当する齊藤俊秀コーチは『サムライ・スプリントバック』(=SSBK)と名付けた。このSSBKが、スウェーデン戦のピッチでも大きな効果を発揮した。
中でも前田大然と田中碧のプレーは圧巻だった。危険を察知し、守備の局面で相手にアタックして攻撃の芽を摘み取った。SSBKでショートカウンターを防いだのは一度や二度ではない。レフェリーのジャッジが不安定で、たびたび不可解なファールを取られることになったが、彼らの存在が効いていた。
現在のチームに根付くSSBKについては、堂安律がこんなことを言っている。
「僕たちからしたら当たり前のことなので、それを評価されても、って感じです。それが当たり前のベースになっているところが、今のチームの状況を表していると思う。全選手が共通の認識を持っています。それをしないと試合に出られないという雰囲気と競争力。1人の選手が得点を取っても試合に出られるかと言ったら、今の日本代表はそうじゃないですし、サボれば、出られないという緊張感と競争のなかで、できている。それが全てじゃないですか」
素早い切り替えも献身的な走りも、当たり前。ボールロスト後に一気に加速して相手に食らいつくことをサボれば、ピッチに立てないのが今のチームということだ。
そしてスウェーデン戦も同じように選手たちは走り、相手に襲いかかった。終盤、押し込まれて何度かピンチもあったが、2大会連続の決勝トーナメント進出を達成。しかも負けなしでグループステージを突破した。
1勝2分けの無敗で3試合を終えたという事実は評価されるべきだろう。日本は勝てなかったのではない。負けなかった。着実に勝ち点を積み上げられるチームになったと見ることもできる。
そしてそのベースにあるのが、今大会の日本の戦いぶりを見た世界の識者が称賛する、ボールを奪われた瞬間に全力では走り出し、奪い返しにいく力ーーすなわちSSBKである。決勝トーナメント1回戦、ラウンド32のブラジル戦でも、それは日本の大きな武器になるはずだ。
取材◎佐藤景【現地】